「ナマエに番が出来たんだって」

ニヤけた面でそう言ったサッチに、俺はなんと答えただろうか。

夢うつつで朝飯をつつくナマエの隣でパンを齧り、ちらりとその横顔を盗み見たが寝ぼけた顔はいつも通りだった。

「ようナマエ、番ができたって?」

「おー」

「絶対作らねーとか言ってたくせによう、どういう風の吹き回しだよ。なぁマルコ」

「…そうだな」

しかし話を振られたナマエは眠そうな面で、それでもへにゃりと笑うものだから俺も兄弟分も思わず黙る。

にーっと歯を出して笑う顔は分かりやすく幸せそうで、俺も兄弟も、次にかける言葉を無くしてしまった。

兄弟分は少しだけ呆気に取られた後、妬みを前面に押し出した不満げな顔で中指を立てて去っていった。分かりにくい、奴なりの祝福だ。

砂を噛むようにパサついたパンを口に押し込み、追うように席を立つ。動いたことに釣られて向けられた視線に、思わず下手くそな愛想笑い。

「……お幸せに」