轟々と、世界を打ち鳴らしているかのような轟音だった。
濁流に飲まれ、体が揉まれる。ごぼりと吐き出した空気すら、吐き出した気泡と認識する前に濁流の中に霧散していく。
(イスカ…!!)
無我夢中で手を伸ばしていた。だが、まるでゴミのように海流に飲まれたイスカの体は力なく渦潮に飲まれていた。
ニューゲートの体もまた、有無を言わせず海流に押し流されイスカの後を追いかけていく。
ああくそ、と余裕のない頭で一つ毒づく。
水をかいた手はこれほどまでに無力だ。無力で、惨めで、たまらなかった。
(イスカ……っ!)
意識が遠のく。
霞濁る視界で、自身の手が届かぬイスカに縋るように伸ばされる。
ニューゲートは、死を覚悟した。
死を覚悟し薄れゆく意識の中で、確かに世界が割れる音を聞いた。