×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -


「ぜぇっ・・・ぜぇっ・・・!」


私は長い長い階段を上って
スカイファイナンスのドアを開ける

「助けてくださいっ!!」

危機を感じた自分は
ある男に助けを求める


―秋山駿

闇金ではないと、あくまでも言い張り
金貸しをしているこの男

神室町の元ホームレス、とは思えない風貌

あの100億を巡る東城会の事件のおかげで
空から降る大金を手にしてここまで上り詰めた
空にちなんで、会社の名前はスカイファイナンス。

波乱万丈な生き方をしてきた人だ



「んー?どしたの、なまえちゃん?」

そんな男は私のこんなに危機感溢れる助けにさえ
冷静で、かつ陽気に返事をする


「秋山さん、一生のお願いです・・・
・・・貸してください・・・!」

「・・・一大事、みたいだねぇ?」


気怠そうにソファから立ち上がると
私の目の前まで向かってくる
高級そうな金色の腕時計をつけた左手が
私の右手首を持ち上げると
もう一方の大きな右手を私の右手に重ねた


「はい、お好きにどうぞ」

「あ、あの〜・・・秋山さん?」

「あれ?゛俺のことを貸して゛ってことじゃないの?」

「も〜・・・違いますよっ!!」

「えっ、違うのー?じゃあなに〜?」

わざとらしく秋山さんは驚く
分かっているクセに、意地悪な人だ

私は秋山さんに「お金」借りようと思っていたのだった
望むのはお客が秋山さんに頼むような大金ではない


「うう・・・昼食代、ください」

私は泣きそうになりながら
秋山さんに懇願する

実は今、私はこのスカイファイナンスの
アルバイトとして仕事の手伝いをしている

そのお昼休憩に外食に行こうと思い
外に出たら、財布を落とすという
とんでもドジを起こしてしまったのである


「そうして私のお昼ご飯代が・・・
消えてしまったんです・・・」

「あらら〜、可哀想に。それでお金をねぇ」

「お給料からひいても大丈夫なので
500円だけでも貸してください〜・・・」

「ん〜、ん〜・・・」

「えぇっ、それでも貸してくれないんですか!?
ワンコインですよ!?ワンコイン!!」

「・・・いいかい、なまえちゃん
ワンコインといってもお金っていうのはね・・・」



・・・また始まった。秋山さんのお金の価値観の話
さすがにホームレスだっただけあって
お金に対する想いが強い

この話はここでアルバイトを始めてから
何度も繰り返し繰り返し聞かされてきた


ぐぅー・・・


そりゃ腹の虫も鳴く
お昼を食べずにあの長い階段を上ったのだから

私は恨むように秋山さんを睨みつけた


「ごめんごめん、冗談だって・・・!
そんな睨まないでよ、可愛い顔が台無しだよ?」

「秋山さん・・・このまま餓死したら、
私、あの世で秋山さんを呪いますからね・・・」

「餓死って・・・なまえちゃん、冗談キツいな〜」

秋山さんは私の一大事をからかうように笑った


「はい、とりあえず一万ね」

「一万も!!秋山さん・・・
ありがとうございます・・・!」


差し出された一万円札を手に取ると
秋山さんに深くお辞儀をして
空腹を少しでも早く抑えるため
ドアへと体を向けた


「あっ・・・ちょっと待って、なまえちゃん、忘れ物」

「へっ・・・?私忘れ物なんかしてな」


私は振り返る。

その一瞬の隙に秋山さんの顔が間近に迫って
温かみのある柔らかい唇が、私の唇へと触れた
3秒程の短いような長いキス、それは甘くて優しかった


「んっ・・・秋山、さん・・・っ・・・!?」


唇を離し、秋山さんはにやりと微笑むと
私に背中を向け出口へと向かっていった


「ちなみに、そのお金は返さなくていいからね〜」


後ろ姿で私に軽々と手を振って出て行く
私は、腰を抜かしてその場にへたり込んでしまった


「あ、秋山さんの馬鹿・・・〜」


気恥ずかしさと、驚きで胸がいっぱいになり
結局、私は昼食を食べることすら忘れ
休憩を終えたのだった


――――――――――――――――



※あとがき


「社長、ここの会社の階段の傍にお財布が落ちてましたよ
一体、誰のなんでしょうかね?」

「あ!そ、それっ・・・私のお財布です!
ありがとうございます、花ちゃんさん〜!!」

「みょうじさんのだったんですね、良かったです」

「あら、なまえちゃんの見つかったのか〜
それじゃあ、あの時のお金返してよ〜」

「えっ、返さなくってもいいって言ったじゃないですか」

「あはははっ、嘘だよ、嘘。
あっ、俺自身はいつでも貸出してるからね」

「あー、はい。ありがとうございますー(棒)」

「全然興味なさげじゃないの・・・なまえちゃん・・・」

prev next
back