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「#エロ」のBL小説を読む
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私は仕事を終えると
いつも通り東城会へと向かう

いつのまにかこうして大吾さんに
会うのが私にとっての日課だった
そしてそれが充実した日にも感じた



「あっ、そうだ
差し入れ買わなきゃ」

心が弾むように上機嫌で
通いなれた神室町のお店へと
足を運び、菓子折りを買う

そう、これも
いつも通りのはずだった






「オッサン、金持ってんだろ
早よ金出せや!」


店の外から響くその声に
私と店員さんは驚いて
顔を見合わせる

恐る恐る店内から覗くと
そこには三人ほどのチンピラが
帽子とサングラスをしたスーツの男と
その傍にいる着物を着た女を
囲むように脅していた


「あ、あれは・・・」


なんだか嫌な予感がする



「・・・申し訳ありません
直ぐに終わらせますので」

「えぇ」



その男は女を背後へと
隠すように前に出ると


「こっちも、暇じゃないんでね」

動じないまま、手首で
相手を誘うように挑発する



「まさか、でもなんで・・・?」



私はこの人を知っている
知っているもなにも



「・・・大吾、さん」



今から逢いにいく人なのだから



でもどうしてこんな所に?
なぜ身を隠すような格好を?

そして大吾さんが連れている
女性はとても綺麗な人で
私が気を取られて呆然としている
うちに喧嘩は既に終わっていた


「・・・お怪我は?」

「大丈夫です」

「そうですか、良かった
さて、参りましょうか」



私の知らない女性と
二人で歩いていく大吾さんを
私は追いかける勇気も気力もなくて
ただその二人の背中を見ていた



自分の弱さとマイナス思考に
なんだか泣けてくる

別に二人がどういう関係なのか、とか
考えるときりが無いのに
私の頭はそればかり考えてしまう


「・・・・・・」


それでも私の足は
東城会へと向かっていた



_______________



「なんや、なまえやないか」


偶然居合わせた冴島さんが
俯いて歩く私の元へと
歩み寄ってきてくれる


「冴島、さん・・・ 」

「?? どうしたんや
お前、顔が真っ青やぞ」

「・・・なんでも、ないです
これどうぞ、差し入れです」

「ん、あぁ・・・いつもすまんな」



震える手をぎゅっと握り締めると
なんとかいつもの笑顔で
冴島さんを見上げる


「それじゃあ、私はこれで」

「なんや、今日は大吾に会わへんのか?」

「・・・もう、もういいんです」

「え?なんやて・・・?」

「・・・大吾さんは
私を待ってなんていませんよ」

「なまえ、お前何かあったんか?」

「すみませんが
さようならって、伝えてください」

「・・・おいなまえ!」


私の作り笑いは酷く脆くて
一瞬でさえも耐え切れなかった

冴島さんに酷く崩れた
泣き顔を見せると
どうしようもなく私は
東城会を駆け出した


惨めで、切なくて、残酷で
私が大吾さんという存在を
どれだけ意識して
どれだけ愛していたのか

今更ながらによく
分かったような気がした



それでも儚い恋だったのか




東城会の出口を出ていくと
大きな黒いリムジンが横を通る

あぁ、きっとこの車には
あの人が乗っているんだろうな
そう思うと尚更嫌になって
私は自宅まで急いで向かった






胸の奥から込み上げてきたものに
声にならない泣き声が口から漏れる


私はいつでも大吾さんに会える
だから、いつしか勝手に
自分は特別なんだ
とそう思っていた

名前で呼び合うことも
そう言う事なんだ、と

でもそれは、違っていたんだろうか




とりあえず、家の中に入り
鍵を開けたドアを閉めようとした

その時だった




「きゃっ・・・?!」


突然手をかけていたドアを
グッと強い力で引かれる
そして玄関に入り込んできたのは
いつもの険しい顔をした
大吾さんだった





「・・・!」


目が合うのを恐れ
咄嗟に目線を伏せると同時に
玄関のドアが静かにパタリと閉まる

その瞬間、大吾さんの手が
私の顔へと伸びると
顔を持ち上げられ強引に
目線を合わせさせられる



「俺に言いたいこと、
あるんじゃないのか」

「・・・」

「なまえ」

「・・・」

「聞いてるのか」

「・・・聞いてますよ」

「なら返事を聞かせろ」



私の顔を持ち上げたその手は
温かいのに、冷たく感じる

大吾さんの表情を見ても
あのいつもの顔だから
なにを考えているのかなんて
私にはやっぱりわからない


怒っているのか
悲しんでるのかさえも




「大吾さんの考えてること
・・・私には、分からないです」

「どういうことだ」

「大吾さんの気持ちも知らないで
私、一人で浮かれちゃって
なんだか惨めじゃないですか」

「・・・」

「・・・でもよく考えたら
なんの取り柄もない私なんかが
大吾さんと居るのは
間違いだったんだな、って」

「お前は・・・そう思うのか」

「そうとしか思えないんです!」




充血した瞳から
枯れることを知らない
涙が次から次へと溢れる



「・・・私なんかよりももっと
大吾さんに釣り合う女性が」

「ちょっと黙ってろ」


急に大声を発した大吾さんの
声にビクッと驚くと
私の肩を軽く押し
廊下の壁へと押し付けられる


「・・・耐えられねえ」

「えっ・・・」

「こんなに侮辱されたのは
これが初めてだ」

「わ、私は侮辱した訳じゃっ・・・」

「・・・言っておくが
俺に釣り合うのはお前だけだ」

「!! そんな事・・・」

「好きだ、なまえ」

「で、でもっ・・・」

「俺が嫌いか?」


ふと見せた大吾さんの表情

それは私にも分かるほど
悲しんでいる目だった


「だ、大吾さん・・・」

「お前が駄目でも、せめて
好きでいさせてくれ・・・」


強くはっきりとした声と
そっと包み込むように
抱き締めてくれたその腕に
しめつけられた心が解ける




「わ、私だって・・・
大吾さん、が・・・好き、です」


その言葉を口にするだけで
一気に感情が押し寄せ
涙が止まらなくなる


しかしあの時みた光景が
私の脳裏を巡るのだ


「で、でも大吾さん・・・
今日・・・私見たんです」

「?・・・なにをだ」

「女の人と、歩いてるところ・・・」

「!!見てたのか・・・」

「・・・」

「だからお前、それで急に・・・」

「・・・っ」



やはり見られては困るものなのかと
再度、不安が募ってしまう

だがそんな私とは裏腹に
大吾さんは可笑しそうに
小さくクスッと笑った


「な、なにが可笑しいんですかっ」

「とんだ勘違いをさせたようだ
まあ・・・前もって言わなかった
俺も悪いんだが・・・」

「・・・えっ」

「あの女性は四国の極道組織を
統べる、松野組組長だ」

「えっ?・・・えぇ!?」

「盃の交渉の案を出されてな
その訳を聞いていただけだ」

「そ、そんな大切な話を
護衛もつけずに?!」

「この盃案はまだ松野組長と
俺だけしか知らないことだ
敵を作らないためにもな」

「・・・は、はぁ」



あの女性は本当に綺麗な人だった

そして誰がどう見たって
二人が 恋人同士にしか見えなかった




「無駄な苦労させたな」

「・・・とか言っておいて
結構好みのタイプじゃ
なかったんじゃないですか?」

「なんだ、気になるのか?」

「そ、そんなの・・・
気にしますよ・・・っ
するに決まってるじゃないですか」


しかし真実を知っても尚、
どこか不安に思っていた

どこまで嫉妬深いのだろうか、私は



「・・・そこまで気になるなら
もう一度言っておく」


そう言って大吾さんは
やっぱりいつもの険しい顔で
私の頭にぽん、と手を乗せて
優しく撫でるように髪を梳く





「俺に釣り合うのは
なまえ、お前だけだ・・・」


大吾さん、やっぱり
私はあなたのその表情が
なにを考えているのか
未だによく分からない

だけど、これだけは分かる




あなたが本気で
私を愛してくれていること

私が本気で
あなたを愛していること





「私に釣り合うのも
大吾さんだけですよ」

ということも。


_____________



※あとがき


冴島さんの救出劇


「大吾、なまえ追いかけてこい」

「?? 確かにすれ違った時
様子が可笑しかったですが
どうかしたんですか」

「なんでもええから行け
やないと、この菓子全部食うぞ」

「そ、それは別にいいですが
すみませんちょっと行ってきます」

「おう、それでええ」



救世主、冴島さん



◎リクエストのご要望で
堂島大吾の夢小説でした!
長ったらしくなってしまい
大変申し訳ないです!
少しでも喜んで頂けると
管理人としては本当に幸いです!
またリクエストお待ちしております!








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