4話

その日はいつもより起きるのが遅かった。
毎朝ギリギリに着くわけじゃないから、ちょっとくらい遅れても平気だけど。正門でスマホの時計を見ると、あと5分で遅刻の時間だった。教室までは5分もかからないし、先生もチャイムが鳴った後に来る。だから、基本は大丈夫だけどちょっと急いだ方がいいかな?

下駄箱で顔を上げると、丸井くんがいた。朝練終わりなんだろう、少し汗をかいている。これって、挨拶するべきかな。でも、喋ったのは一回きりで、その後はラインだけ。う〜ん。
もし、靴を脱いで、振り返って、まだそこに丸井くんがいたら、そのときは勇気を振り絞って挨拶しよう。そうしよう、って心で決めて振り返った。

「よっ、おはよー、苗字」

「あ、おはよう、丸井くん!」

「遅刻すんなよ?」

「うん、頑張る」

びっくりした。
振り返ったら、まだいるどころか、目の前にいた。びっくりしすぎてドキドキが止まらない。
鼻で息を吸って、大きく吐く。
大丈夫だったかな、ちゃんとおはようって言えてたよね?
ついさっきのことなのに、自分が喋ってた記憶が残ってなくて、心配になる。丸井くんの言葉は、ちゃんと覚えてるのに。

そんなことを考えてたら教室に着いたのはチャイムと同時で。たまたま目が合った丸井くんにセーフって口パクで言われた……気がする。恥ずかしい。
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