「なーなー、お前って友達いんの?」
私の机にバンッと手をついて言うのは最近ちょいちょい絡んでくる向日だ。
忍足と仲が良いのは勝手だが、たまに私に変な話をふるのはやめてほしい。
「確かに。いじめられたりしとらんか?お母さん心配やわ」
「誰がお母さんだって?」
「苗字さんの保護者って言ったら俺しかおらんやろ」
「お前なんかに保護者になってほしくない」
「とにかく!お前友達とかいんの?」
「いるに決まってるじゃん」
流石にこれは失礼にもほどがあると思うんだけど。私にだって数は少なくても友達はいるし。狭く、深くが大切なんだよ。
「でも、お前昼休みも教室いるじゃん?」
「それは勘違い。昼休みは一緒にご飯食べてるから」
「苗字の言うことってなーんか、信じれないんだよな」
「お前の方が嘘つきそうだけどな」
「まあまあ、2人も落ち着きぃや。それなら、会いに行けばええやろ?そうすれば嘘じゃないことも証明できるし、岳人も信じれるやろ。俺も苗字さんの無事確認したいし」
こいつはいつまで保護者設定続けるんだよ。いじめられてるとかないし。というか、いじめられたら目立つんじゃないか?目立ちたいわけじゃないけど。
いやいや、今はそんなことじゃなくて。いきなり会いに行って迷惑じゃないといいな。
「ここ」
「C組?」
「うん」
ちょうどドアの近くにいた女の子に、千尋ちゃん呼んでもらっていい?と頼む。チラリと私の斜め上を見て頬を染めたのは、どうせ忍足が胡散臭いスマイルでも向けたんだろう。
女の子に呼ばれると、教室の前にある女子の輪から1人、背の高い女の子が歩いてくる。
「どうしたの?」
「急にごめんね。何か私に友達がいないんじゃないかとほざく奴らがおりまして」
「ああ、だから証拠みたいな」
「うん」
「初めまして。正真正銘名前の小学校からの親友、千尋です」
「お話伺っとります。苗字さんがいつもお世話になっとるみたいで」
「いえいえ、こちらこそ。名前いつからこんな有名人と仲良くなったの」
「仲良くなった覚えはないよ」
「おい、友達がこんなやつって聞いてないぞ!」
向日が驚いている理由は一つ。千尋ちゃんが有名人だからだ。バスケ部のエース、他校からスカウトにくるぐらい強くって、それから、すごく背が高い。明るいから、顔も広い。私の自慢の友達だからね。
「お前と正反対だな」
「わかってるけど、あえてそんなことないって否定しとくわ」
「名前、地味に面白いでしょ」
「地味にな」
「千尋ちゃーん?地味って聞こえたんだけど」
「地味って言ったからね」
「千尋ちゃん私のこといじめるの好きだよね」
「うん」
これだから千尋ちゃんは。他の子の前だと頼れるお姉ちゃんみたいな顔してるくせに。
「まあ、私の友達こんな感じなんで」
「1人だけなん?」
「いないわけじゃないけど、たいして仲良くないし」
「名前の友達なんて私だけでいいからね!」
私に友達が少ないのはすごく千尋ちゃんのせいな気がしてきた。
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