コンラッドの受難[其の二]




俺の愛しき君は朝が弱い。

陛下であるユーリと走り込みをした後、君を起こすのが俺の日課。それは誰にも譲れない。

君の護衛のオリーヴが五月蠅いが、彼女から雷が落ちる前に――より早く忍び込む。

もう一度言う、俺の大切な君は朝が弱い。

そして勝手に淑女の寝室に忍び込む罪悪感はもちろんある、が―――……、


「(これはないだろ…)」


いつものように起こしてたら『う〜ん』っと声を出したっきり、微笑みながら眠っている。

それは良いのだが、体勢が問題だ。

俺も衝撃に油断していたのも問題だったけど、どうしようか。

左腕を寝ぼけたサクラに取られ身動きが取れない状況だ。彼女は俺の腕にしがみ付いて気持ちよさそうにしている。


「サクラー起きて下さい」

『……うぬ、ぬ〜…んー』


右手でサクラの肩を軽く揺する。




ぎゅッ




「っ」


嫌だと拒むようにより一層彼女が俺の腕に顔を寄せた。

思わぬサクラの行動に、コンラッドは右手で自分の口を塞いで鼓動が早くなった心臓を落ち着かせる。




ドキドキ




鼓動が活発に動いているのを感じながら視線をサクラに戻す。

楽しみの一つだったサクラの寝顔は、今俺の腕を掴み幸せそうにしている。

無意識に、無意識だからこそ気配に敏感な彼女が自分の腕でスヤスヤ寝ているのはとても嬉しい。と、同時に邪な想いも湧き上がる。

少しだけ開いているその朱い唇に視線が向かう。

今日も――今日とてそのふっくらした朱い唇は美味しそうに見える。



――弾力が――……


「(否、俺は何を…)」


眠っている女性を襲うのは紳士としてマナー違反ではないか。……毎朝寝室に忍び込んでいるのも紳士のする事ではないけど。



___ぐっと我慢する。





嗚呼


――早く起きてくれ。




「サクラ」


コンラッドはサクラを愛おしそうに頬を撫で、優しく微笑んだ。

もちろん彼の理性が総動員されている事は忘れてはいけない。






コンラッドの受難[其の二]




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