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「切れてるよ?」


ベースに設置されているテレビ画面を指差して、麻衣がポツリと指摘した。

促されて画面を見て他の画面も見たら、他の画面はちゃんと機能している。一つの画面だけが真っ暗になっていて、一同はその画面に眉を顰めた。


「荷物が落ちてきたのは?」

「二階の廊下よ。 廊下の端。段ボール箱が積み上げてある……」

『……二階の西端』


渋谷君が私を一瞥して頷いてくれた。 そして、直ぐに記録されているだろう映像を皆で確認する。

黒田さんがここを訪れた時刻の映像をありとあらゆる画面から――すべての映像を再生したら、映像は、黒田さんが緊張した表情で校舎の中に入るところから始まって、しきりに辺りを警戒しながら歩いている黒田さんが映っている。

麻衣がゴクリと喉を鳴らす音が聞こえた。

――と―……、黒田さんが問題の廊下に来た時カメラに白い何かが通り過ぎ…あっ、と思った瞬間には彼女へ向かって高く積み上げられていた段ボールが倒れていき――…ここで、映像はプツリと途切れた。



「何これ。壊れてるよ」


腕を擦りながら麻衣が渋谷君に言った。


「……壊れているわけはないんだが。意味深だな」

「意味深?」

『(意味深も何も…)』


映像には霊はおろかそう言う類のモノは映っていはいなかったし、何も感じなかった。霊気の痕跡すら。

だとすれば、この記録は好意的に途切れさせたって事で……一番怪しいのは黒田さん。黒田さんがこれをやったんだろうけど…証拠がないから下手に何も言えない。


《とんだ茶番だな》

『…(確かに)』


――ここまでするの…黒田さん。


瑞希は半目で彼女を見遣った。


「声がしたと言っていたな?どんな声だった?」

「掠れていたけど、女の子の声だったと思うわ」

『(女の子、ね)』

「…瑞希さんはどう思います?」


私の横で同じように映像を見ていたリンさんが唐突に尋ねてきた。


『――ぇ…』


何でこの場で訊いて来るんだッ!っと思ったけど…リンさんの質問に渋谷君を始め、麻衣や黒田さんまでも私に注目していて――…軽く息を吐き出した。

同時に黒田さんから鋭い視線を貰い、眉を寄せる。


『私は…真砂子を信じますよ』

「つまり霊はいないと?」

『……真砂子がそう言うならそうなんでしょう』


霊などここにはいない。

そうはっきり言いたいけど…どうせ皆は信じないだろうし、真砂子を疑っているなら許さないと先に牽制しておく。

真砂子は正しい。――私の友達に難癖つけるな。


「ねえ? 真砂子は霊なんていないって言ったでしょ? あんなにきっぱり断言してたじゃない。 でも、実際こうやって映像が切れちゃったりしてるわけで、それってなんで?」

「さあ……。彼女の才能は信頼に値すると思っていたんだが……」

「原さんって、本当に霊感があるのかしらね。 マスコミで持て囃されていることは、確かだけど」


麻衣と渋谷君の会話に黒田さんが鼻で笑いながら話に加わる。


『……』

《なーこいつ消していいか?》

『――なッ!?』


――ダメに決まってるでしょー!


半ば絶叫しながら声を上げたので、必然的に瑞希に集まる視線。


『……あ、あはは…何でもないです』

「女性の霊媒というのは、好不調の波が激しいのが普通だが……」


訝しむ渋谷君の意識が黒田さんに戻ったところで――…ジェットに目を向けて軽く腕の辺りを掴む。


《……冗談だ。…半分は》

『(半分って…半分は本気だったのね)』


フンっと鼻を鳴らして目を窓の外に向けた我が式神に呆れた溜息を漏らす。


――うん。

私に向けられている意味深なリンさんの視線なんて感じない。見られてない、見られてない。



「……それとも、君と波長が合ったのかな。 旧校舎に霊がいたとして、その霊は君と特別、波長が合うのかもしれない」

「そうかもね」

『――!!』

《これはこれは》


不意に負の気配が濃くなって私とジェットは黒田さんを振り返った。

問題の彼女は――…より一層濃く陰の気を纏って……ヴァイスが好みそうな気味の悪い気=B その様子を見て…ジェットは感嘆の声を上げ私は顔を曇らせた。


―――あのままでは…黒田さんは……。







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