2-2 [6/8]


「そう言えば私クッキーとカップケーキを持ってたんだわ!」

『私も、クッキーなら持ってるよ』


あっ、と声を出したリリーに続いて、私も持っていたチョコレート入りのクッキーをテーブルの上に出した。

リリーのとあわせてもお釣りが来るくらいの量で、リリーとにんまり笑う。こんな事になったけど、未来のハリー達とお茶会なんて、普通に生きてたら経験出来ないよね!

未来に来れた点では、シリウスに感謝しないでもないかも。


「よく持ってたね…あ、持ってましたね」


結構な量に、ロンが顔を輝かせてたけど、途中で何故か言い直した。

ハリーもハーマイオニ―も、私達が何でこんなにお菓子を持っていたのか気になるようで、顔を疑問符でいっぱいにしている。


『敬語じゃなくてもいいのに。私たちよりも年上でしょ?』

「うんうん」


リーマスもお菓子の登場に、誰よりも目をキラキラさせて、皿に盛ってくれていた。


――甘い物に目がないのは、未来でも変わってないんだね…。

私は、意気揚々なリーマスに笑みを零して、ロンに視線を戻す。ロンは気まずげに目を左右に、動かしていて、ついでに口もパクパク動かした。


「だって…ハリーのマ――…」

「ウィーズリー!」

『!』


ロンにいきなり怒鳴ったセブルスに、ロンとシルヴィも、リリーも、びっくりして肩をびくんとさせた。

セブルスは、リリーがビクついたのを見て、ロンに向かってもう一度鋭い視線を送る。


『あー…なるほど』


大声に驚いたけど、ロンはハリーの母親がリリーだから、タメ口は出来ないって言いかけたんだよね、多分。途中で、セブが邪魔したから定かではないけど…高い割合でそうだろう。

それなら納得。友達の母親の過去の姿だとはいえ、母親には変わりないのだから、ロンは気が引けたんだろうと思う。

ハリーとハーマイオニーは溜息を吐いて、両側からロンに肘で突いていたけど、私が納得の声を出したので、私に視線が集まった。リーマスは早速、リリーのクッキーに手をつけている。


「そう言えば、あなた…出会いがしらに“ママ”って言ってたわね」

『(あー…リリー興味持っちゃったよ)』

「あなた…まさか、ポッターとシルヴィの間の子じゃないでしょうねッ!?」

『ぶッ、熱っ』


リリーがとんでもないことを言い出したので、紅茶を吹き出してしまった。

隣でシルヴィが慌てているのに、リリーは目を吊り上げてハリーの顔を食い入るように見ていて、リーマスは変わらずクッキーを頬張っている。


「おいおい、慌てすぎだろ」

「大丈夫か?」


シリウスは指をさして笑っていて、セブルスだけが私を心配してくれる。うう、ありがとうセブよ!

セブルスは零れた衣服を乾かしてくれた。すぐに、的確に杖を振ってくれたので、熱いと思ったのもほんの一瞬ですんだ。

また新たに紅茶に淹れてくれたセブに、ありがとうと礼を告げて、怒り心頭気味のリリーに苦笑した。まあまあ、落ち着こうよ。


『リリー…冗談でも恐ろしいこと言わないでよ』


リリーからじゃかく、何故かハリーの方から、「え…」と間抜けな声が聞こえたのは気のせいだと思う。

さも冗談でしょと言うシルヴィに、リリーもそうよね…と、浮きかけた腰を椅子に深く乗せた。


『ハリーはリリーとポッター君の間の子供だよ、きっと』

「え」

「え、えぇッ」


落ち着いた親友を横目に、ジェームズと結婚するのは私じゃないからと思って、そう発言したら、ハリーだけじゃなく、ロンまで素っ頓狂な驚きを見せた。


――当然なことを口にしただけなのに…。

視界にシリウスが、困った感じで頬を掻いているのが映って、セブルスの方を見たらリリー越しに目が合う――…二人とも何言ってんだって感じの眼差しで、私は意味が分からず、片眉を上げた。



「え、シルヴィこそ何言ってるの!有り得ないわ。絶対シルヴィの子よ!」

『ないない。仮に未来で私が結婚してたとしても、ポッター君と結婚することはないよ』



おいおい、ハリーのママ大丈夫なの?とか、

この頃は…仲が悪かったのかしら…。とか、

離婚の危機なんじゃないか?ハリーは無事に生まれるのか?とか…。

仲が悪いって言うより、ハリーのママの方が毛嫌いしてる感じかしら?とか、



ショックを受けているハリーの横で、ロンとハーマイオニーが小声で会話しているのを尻目に、私はリリーに向かって説明をする。


『それにハリーは…』


――ん?

――んん?んんん?


そう言いかけて、ハリーの眼とかち合って、違和感を感じて、首を捻った。


「ちょ、」

『スト〜ップ、じっとしてて』


慌てるハリーを制して無理やりメガネを外す――と、メガネのしたの瞳はリリーと同じグリーンな筈なんだけど――…。


「シルヴィ」


リリーの問いかける呼び声にも反応出来ずに、シルヴィはハリーの瞳に釘づけ。


『……紫暗…色…』


___ハリーのつぶらな瞳の色は、紫暗色で私の父さんと同じだった。つまり私と同じ。

リリーも私の背後から顔を出して、ハリーの顔を覗きこんで、息を呑んだ。

長い時間硬直してたような錯覚の中、ハリーが恥ずかしそうに身じろぎしたので、あゴメンとメガネを返した。……え、何で。グリーンじゃないの。


『……』


うん、ここは私の知る未来じゃないのかもしれない。未来はいくつもあるって言うし。私が存在した事で未来が捻じ曲がったとは考えたくないよー。

ぐるぐる脳味噌を働かせたけど、考えるのを放棄した。だって、面倒くさいしね!


「ねえ、あなた本当にシルヴィの子供なんじゃ…」

「リリー。あんまり詳しく知っては駄目だ」

「セブルス。…そうね」


リリーがセブルスに咎められて、落ち込んだのは一瞬だった。


「じゃあ、どんなお母さんか聞くのはいいでしょ?」

「それは…」

「いいんじゃね?性格だけなら。な?」


リリーに味方をしたのは意外にもシリウスで。セブルスは、シリウスの助言に苦虫を噛んだような表情をしたけど、杖を出したりはしなかった。

なっ?と、問われた大人組のリーマスは、クッキーを片手に、そうだねって肯定の返事をした。


――リーマス…クッキーは取り敢えず皿に置こうよ。

甘い物に目が無い同級生の姿に、大人の姿なのに違和感が無くて悲しいやら嬉しいやらで、ちょっと複雑。


『(それに比べて…)』


シリウスとセブルスは、意見の対立はしてもケンカしたりしないんだね。セブ杖を取り出したりしなかったから、リリーが隣で安心してた。

リーマスとシリウスの許可が下りたので、ハリーに全員の視線が集中して、私は、リリーの焼いたクッキーが食べたくて、更に手を伸ばす。リーマスばっかり食べてて、ズルい。リリー作のクッキーは、もう半分も無くなっちゃった。


「ママ…お母さんは……」

『うんうん』

「どんな人なの?」


ジェームズがリリーと結婚してないのなら、誰と結婚したのか気になる。…――あれ?結局、リリーと結婚してないんだっけ?ハリーの目の色が違うだけで、彼女と結婚してるのかも。

そこまで考えて、これからリリーは驚くだろうなと、シルヴィはにんまり笑みを浮かべた。


「いつもパパ…お父さんがお母さんにベタ惚れで、お父さんと仲が良くて、見てるこっちが恥ずかしいくらい」

「ハリーのパパとママはラブラブだよね」

「うんうん。性格はどんな方なのかしら?」


途中ロンの感想も入るのを聞きながら、クッキーを味わう。

美味しい。固すぎずサクッとしていて、美味です。これはリーマスじゃくても、手が止まらなくなるね。


「お母さんは基本的に面倒くさがりな性格かな」

『うんうん』

「後、魔法の知識とか豊富で、面倒くさがりなんだけど、僕のこといつも守ってくれたり優しい」

「ジェームズやハリーと違って箒が苦手なんだよなーアイツ」


私が作ったお菓子も、リーマスが食べてくれていて、順調に減って来ている。だけど私はリリー作のお菓子を食べる。自分のは味見で食べ過ぎて飽きたんだ。

今度はカップケーキに手を伸ばして、リリーと頷き合いながらも、味わう。ハリーの言うリリー像に、面倒くさがりだって項目が入っているのに小首を傾げるけど、リリーは優しいもんね、納得。


『ハリーはお母さんのことが好きなんだね』


シリウスがしたり顔で頷いて言い放った科白はスルーして、シルヴィはハリーに慈愛の笑みを浮かべて微笑んだ。


――親友の未来の子供を見て、親友の子供だからか、自然と可愛いと思ったのだ。

耳まで真っ赤にさせて、うんと頷くハリーの反応は殺人的に可愛い。見た目はジェームズに似ているのに、反応が違うだけで、こうも違うとは。


「なんか…あたし、当てはまる人物に、かなり心当たりがあるんだけど」

『ん?まぁ未来なんて複数あるって言うし…どうなるか分からないよ?でもね、大丈夫、何だかんだ言ってリリーはポッター君のこと好きになるから!保証するよ』


彼にだっていい所あるから、そう悲観することもないよ?っと、言葉を更に続けたら…何故か全員から凝視された。何なの。

リリーにまで可哀相な眼差しを頂き、さすがの私もちょっとショックだよ。でも、何でそんな反応されるか分からなくて、セブルスに助けを求めると溜息だけが返って来て途方にくれる。





- 9 -
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -