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―ごぼ


――ごぼごぼっ





『っケホッ、ケホッ、っ…』


――ここは―…『何処だ』咳き込みながら辺りを見渡す。 水で流されながら来るこの交通手段はなんとかならぬものか。

今回流された場所は住宅地の――…どうやら囲まれた住宅裏側の噴水に出たみたいだ。 周りはシーンとしてどこか薄気味悪いものを感じる。

人っ子一人もおらず…ポツーンと思考が停止する。



――ふむ、どうしたものか…。


今回も眞魔国を訪れたという事は、偶然ではなく眞王陛下とやらの導きに違いない。 

初めてこちらに来た時には、近くにユーリ達がおったので困りはしなかったが…今回はどうすれば善いのだろう……ここに現れるって事は城の人達に知らせが届いているであろう。そう思いたい。

ならば、ココ動くを事は得策ではないな……。

しかし、この場所が何処であるのかは確認したい。人間の国ならば迫害される…私は眼も髪も黒いから。

そこまで考えた所で、噴水から出て自分の服装をチェックする。

今日は暑かったので帽子に、紫外線対策で淡い青色のパーカを白いキャミソールの上に身に着けていた。ちなみに下は濃い群青色のチェック柄のスカートである。

黒い髪の毛を一つに束ね帽子におさめる。カラーコンタクトは持ち合わせておらぬが…帽子で多少は瞳を隠せるであろう。


『そう言えば…ユーリは来ておらぬのだろうか?』


ここに来るまでは一緒におったが――と、辺りを見渡すがやはり誰もおらず。

サクラも来ておるのだからユーリも来ている筈だ。根拠のない持論でそう思考する。

仕方ない、ユーリを探すついでに現状把握しようぞ!いや…決して、人っ子一人おらぬこの状況が怖いわけではない!否定はするが足早にその場を去る。

――にぎやかな方へと。







 □■□■□■□




「それは本当か!?グウェンダル!」


白鳩飛べ飛べ伝書便から受け取った手紙と共に告げられた内容に、急いでグウェンダルに詰め寄る。グッ詰まった声が聞こえたが…そんな事を気にする余裕はなかった。


「落ち着きなさい、コンラート」


宥めるギュンターの声でさえ煩わしく聞こえる。


「本当だ、たった今眞王廟から“漆黒の姫”を呼んだと報告があった。サクラの事だろう」

「っ! 何処だ!サクラは今何処にいるんだっ!」


コンラッドは眼を鋭くさせ己の兄の襟を掴み、激しく揺さぶる。


「ぐっ、お、落ち着かんか!コンラートっ!」

「で、何処なんだ!?」


そこにはここ数か月酷く落ち込んでいた弟ではなく、瞳には光が戻り生き返ったかのよう…且つ焦りも見えたが、その事実にグウェンダルは安心した。

サクラがいなくなってまた生きた屍の様になるのではないのか――…と懸念していたのだから。


「ここから西にある城下のはずれの町に現れるはずだ。人間の国ではないから心配することもないだろう」

「!そこなら数時間で行けるな」


そう呟いた彼は――…会える喜びと、早く会いたいと急かす気持ちが混ざり合って、嬉々としているのに足は鬼気迫る迫力で執務室を出た。

考えなくても分かる、きっとこれから一人でも迎えに行くのだろう。本来ならば姫のお迎えなので、後、数人を一緒に連れて行ってほしい所だが…再会を望んでいた彼にその言葉は野暮だろう。

残されたグウェンダルとギュンターは、自分の弟や自分の教え子の生き生きとした姿に、呆れと共にもう大丈夫だと安堵した。



コンラッドは自分の愛馬ノーカンティーを連れ出し、その鬼気迫る閣下の表情に「何があったんだ!?」と兵士は騒いでいるが、そんな外野の声も聞こえず城を飛び出す。


「サクラっ」



――ただそれだけを胸に――…。








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