君らしく純真なままで 5 | ナノ

二次創作

君らしく純真なままで







 実のところ、彼女が帰国しているのは知っていたのだ。おおよそ五日前に彼女から届けられたメール。──二週間、日本に帰国します。彼女が祖国の地を踏んだのが、ちょうど三日前の土曜日。

 メールの本文には他にも、彼女らしい他愛もない雑談や近況報告、そして、彼女が日本の高校を受験することなどが書かれていた。受験するのはヤマトと同じ都立の高校。それなりに倍率は高いのだが、ミミは意外にも、頭は悪くない。確か光子朗も同じところを受験すると言っていた。合格すれば、来年にも彼女は本格的に、晴れて日本に帰国するのだ。



「タケルくんたら、優しいんですよー、空港で花束を渡してくれたの。帰国おめでとうって」



 ヤマトに送ったメールと同じものを、みんなにも送っていたらしい。今回の帰国は一時的なものだが、気の早い話、仲間たちは彼女が祖国に返り咲くことを一足先に祝ったらしい。ミミの話は、その時のものだろう。



「ヒカリちゃんが手を繋いでくれて、ミミさん、行きましょうって」



 ヤマトとミミは、人混みに溢れる大通りを逸れ、地元民しか使わないような裏道を、肩を並べて歩いていた。ぽつりぽつりと、言葉を紡ぐミミに相槌を入れる。



「大輔くんと賢くんが荷物を持ってくれてね、

 京ちゃんが、あたしの大好きなツナマヨのおにぎりをお店からいっぱい持って来たから、パーティーしましょうって、はしゃいで」



 隣を歩くミミが、風にそよぐ柔らかい長髪をそっと耳に掛けた。露わになった耳朶で、小振りな金色のピアスが揺れるのを、ヤマトは吸い込まれるように見る。まだ子供だが、それでも十分に大人になった。ハードをモチーフにしたシンプルなピアスは、ミミによく似合っていた。



「伊織くんは、それを見て呆れ顔で」



 ふふ、と形の良い艶やかな唇から笑みが零れるのを、ミミは三本の指で塞ぐようにした。



「太一さんと丈先輩が、笑いながらこれまでのことを教えてくれて」



 たおらかにそよぐ髪が、ヤマトの肩の辺りを擽り、再び、あの甘い香りが立ちこめた。ふと、時の流れを感じる。冒険の頃は同じくらいだった二人の身長は、年を数える毎に少しずつ差を開けて行った。あのサマーキャンプの日からおよそ五年。肩の横で揺れる、ミミの小さな頭を眺めて、ヤマトは目を細める。



「光子朗くんがね、デジタルワールドに行きましょうって」



 そして、ヤマトを見上げたミミと、視線がかち合った。割と近かった距離に、少し心臓がむず痒くて火照る。

 先に眼を逸らしたのはミミだった。手の甲をニットの袖で隠しながら、細長い指を身体の前で絡め、少し俯いた。





「それでね、空さんが、あたしに謝ったの。

 ……ヤマトさんが来ていなくて、ごめんねって」



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現代の話はあまり長くならないですね。
これ、本当にヤマト×ミミではありませんけど、わからない、そう思ってるのは自分だけかな。

二代目選ばれし子供たちの名前も登場させました。
大輔、京、賢も好きなんですよ。伊織のことも大好きと大声で言いたいのですが、他三人のエピソードはそれなりに覚えているのに伊織のことはほとんど覚えていないことに私自身愕然としました。全然覚えてないのに好きと叫んでもいいものでしょうか。
覚えている印象は、光子朗に更に輪をかけたようなクールっぷりと言うか。光子朗が砕けた感じの固すぎない敬語を用いるのに対し、伊織はもっと丁寧だったかなと言う記憶です。
あと、タケルとはジョグレスするくらいだから、実は相当仲良いんだろうなと思った記憶があります。それくらい? ……もう一度デジモン見たいです。


2013/11/11

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