町に立ち並ぶ様々な店。威勢のいい声を上げて野菜を売っている気のよさそうな男性に、美しいガラス細工を売っている店の店主が客が来ないのかこっくりこっくりと舟をこいでいる。


テレシオは、この町は凄いなと半ば感心したようにその光景を眺めていた。


何故かと問われれば、ありえないからと答えるしかない。文明が発達しきったこの時代に、このような光景を見ることはまずない。

冷たい鉄に覆われた巨大なビルに所狭しと詰め込まれた店。そこに行けばなんだって揃う。店員たちは利益を上げるために必死に愛想笑いを振りまき、客はただ淡々と自分の目的の品を探し求める。


確かに、この世界は豊かになった。だがしかし、確実に温かみのない世界になっていた。



だからだろうか、このような町がまだ残っているのだと思うと心温まる。リベラの方は、目にするもの全てが目新しいのかキョロキョロと瞳を輝かせながら辺りを見回している。その光景も何だか微笑ましい。






「どんな服が欲しいとか、そういうのはある?」




このままでは、永遠と町を眺めていそうなリベラの様子を見て、テレシオがそう問いかける。

リベラは、迷う様に首を傾げるとキョロキョロと辺りを見渡してから、テレシオの服をつかんで引っ張った。




「あそこ」



「え、ちょっと」





短くつぶやいて、テレシオを引っ張って歩き始めたリベラに驚きながらもそのまま引っ張られる。ずんずんと歩いていくリベラは一つのことに集中すると周りが見えなくなる質らしい。それがリベラと重なって、ふっと笑みが漏れた。





「…どうか、されましたか?」




足を止めて、訝しげにこちらを見つめるリベラ。テレシオは、自分の顔が緩んでいることに気付くとあわてて弁明するように言った。





「い、いや君が知り合いに似てたもんだから!」





何故、自分はこんな言い訳じみたことを言っているのだろうと思わなかったわけではない。だが、調子が狂う。何故こんなにも、この少女はリベラらしいのだろうか……


テレシオの慌て様に少し首を傾げたリベラだったが、そうですか。と納得したように頷いてまた歩き出す。もちろんテレシオの服を掴んだままだ。







「あそこのお店がいいんです」




そう言って、リベラが指さした店にテレシオは絶句する。何故?同じだったからだ。


リベラが、かつて共に過ごした幼馴染の少女が、


「おっきくなったらここの服着るのーーーー!!」


と、高らかにこの店の前を通るたびに叫んでいた店だったのだ。



もしかして、記憶が受け継がれているのではないか。他人のように接している自分に気を使ってわざと素知らぬふりをしているのではないかと思うテレシオだったが。


それはないと淡い希望をすぐに打ち砕く。


何故ならこの少女は、自分の笛の音を初めて聞いたと本当にうれしそうに話したのだ。あの言葉に嘘偽りがあるとは思えない。




微かな期待を胸の中に仕舞い込んで、テレシオはリベラと共に店の中へ足を踏み入れた。









全てのに祝福を


――――君が生まれてきたことを



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