同時刻、レヴァトゥーラのもとへとティズモから通信が入った。内容は、サムライが完成した。オステ討伐のための部隊を編成してほしいというもの。


当初は疑っていたレヴァトゥーラだったがティズモから送られた映像を見ると、すぐさま一人の男が呼び出された。

名を、テレシオ。








「サムライ≠ニ共にオステへと向かい、奴らを殲滅せよ」




「仰せのままに」






頭(コウベ)を垂れて平静を装ってそう言うが、テレシオは恐ろしいほどに歓喜していた。やっとだ。やっと悲願が達成された。














六年前の事だった。それまで、リベラを待ち続けるのが自分の役目だと思い、笛を吹き続けていた。だが、それでは何も変わらない。あらゆる手を尽くして彼女に関することを調べた。

そして、手に入れた情報は、彼女がサムライと言う名の兵器を作るための贄とされたこと。そして、いま彼女と同じ名前のサムライが誕生したという噂が流れている。


漆黒の髪にすみれ色の瞳。刀を振るい続ける小さな少女を見かけたという情報がいくつかあった。


ならば、と。彼女はオステ達を滅ぼすための道具とされたのだ。そんなことは認めない。自分が戦うのだ。


だから軍部に入った。少しでも彼女と近い所に行ける様にと。そして時が来れば、自ら進言してサムライと共にオステへと向かわせてもらおうと思っていた。

だがまさか、こんなところでこんなチャンスがこようとは。









レヴァトゥーラが奥の間へと引き返したのを靴音で確認したテレシオはゆっくりと下げていた頭を上げる。そして、踵を返して歩き出す。


すぐにでも、向かいたかった。


彼女を一目見て、無事を確認したかった。



外へ出ると、無駄に大きな黒塗りの車に案内される。おそらく高級車なのだろうが生憎テレシオはそんなものに興味は微塵もない。

冷めた目でそれを一瞥すると、できるだけ急いでほしいと運転手につげ、静かに瞳を閉じた。









目的地は町のはずれにある小さな宿屋。あまり公にしたくない案件だからこのことを知るのは上層部の僅かな人間だけらしい。


まぁ、それは好都合かもしれない。


自分は、正義の味方になりたいのではない。ただ、リベラを守りたい。幼いころからともにいた小さな相棒を。失うわけにはいかない。




黒塗りの車が、エンジンをふかしながら目的地へと近づいて行った。











争本能にのまれるな

――――刻一刻と迫る時

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