煮えたぎる怒りは



淡い光を放ちだす、ラピスの武器。【鬼殺し】。

それを見て、亞愁はさらに笑みを深める。

切り裂かれた肩口の傷。そこからあふれ出す鮮血。普通の人間であれば、卒倒するのが当たり前というくらいの深く大きな傷だ。それなのに、亞愁はものともせずに笑っている。

痛みなど、感じていないように。

それが、薄気味悪くてラピスは、早く終わらせてしまおうと刀を亞愁の左胸めがけて突くように放つ。




グチャリ




いとも簡単に刀を受けた亞愁はまだ笑っている。君が悪い。自分が殺されたのになぜ。

人間だれしも、死に対する恐怖というものを持ち合わせている。それは、いかなる強者であってもだ。

人は死に直面した時、これから自分に訪れるであろう終わりに恐怖し、顔をゆがめる。笑うなんて、ありえない。

戦いの中で死ぬものならばなおさらだ。




「何故。笑っている」




再度ラピスが問い掛けるも、亞愁は動かない。もうすでに息絶えているのか。

ラピスが、亞愁の左胸から刀を引き抜くと一気に鮮やかな赤が散る。

もう、つまらない。

強いと思っていた亞愁とかいうやつもいとも簡単に倒せてしまえた。

雑魚どもを一掃して早くここのボスをつぶしてしまおう。そう思い、ラピスは、刀を振るおうとした。




「…っ!?」




動かない。

まるで、鋼の鎖で縫い止められたかのように腕が、脚が、体が動かない。




「なんだ…これはッ」




目を見開いて、動揺するラピスに、待っていましたと言わんばかりに周りで傍観を決め込んでいた雑魚たちが襲い掛かる。

引き裂かれる体。溢れる鮮血。狂気の色をたたえていく瞳。

自我を失う少し手前、ラピスは、襲い掛かってきた男が呟いた言葉を聞いた。















亞愁様……遂に成功しました………!!


仲間であろう男。崇める様にして称えていた男が死んだにもかかわらず、呟く男の声は歓喜に満ち溢れていた。















気に入らない。

こんな弱い奴らに負けるなんて、気に入らない。

ゴォオオオオと、突如として辺りを火柱がつつむ。それは、赤い、紅い、炎。

紅の炎が殲滅を命じられたファミリーの屋敷すべてを飲み込んで、跡形もなく消し去った。

そして、その炎を放った者は、なんとか炎を免れた敵ファミリーの残党を見つめて、笑う。




「ねぇ、亞愁って何者?」




否、彼女がわざと殺さなかった者たちに問い掛けた。




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