痛む心を捨て置いて
カツカツカツ、と敵の血を吸ったブーツが乾いた音を立てる。
疲れたから休むなんて、苦しい言い訳して出てきたけど、あの場所は居心地が悪かった。
自分に向けられている、疑いの目。お前は何者なんだという、前から嫌というほど向けられてきた視線。
ラピスは、昔からそういう視線を受け続けていたがために、自分に向けられる殺気や敵意などには人一倍敏感になっていた。
もしかしたら、長年裏社会に身を置いてきたせいかもしれない。
でも、実をいうとヴァリアーに入れて好都合だと思っている。ボンゴレに、近すぎず遠すぎず。
ボンゴレを守るには、丁度いい距離だと思っていた。
そして、彼らが自分のことを信じるつもりがないのだということも感づいていた。
だって、見ず知らずの女をわざわざ仲間に迎え入れるなど彼らへのメリットがない。戦力が足りないというのなら、私を仲間へ加えず、勝手に私に敵をつぶさせればいいだけ。
そう、仲間に入れる必要などないのだ。
彼らが私を仲間に引き入れたのは、いざという時に私を始末するため。
私がもし、ミルフィオーレ側に寝返った時、ファミリーを裏切った者を始末するという名目で私の命を奪える。
もちろん、私をファミリーに引き入れることをしなくても、私を殺すことはできるだろう。
だか、
彼らは気づいてる。
私の後ろに何がいるのかを。
だから、私を殺す名目を作る。
彼ら≠焉A納得せざる負えないような私≠始末する理由を。
だけど、死ぬつもりはない。
まだ、生まれて何年もたっていないような人たちに、私が負けるはずがない。
「利用…しようとしてるみたいだけど」
私を利用しようなんて、馬鹿げてる。
もし、彼らが私を殺そうとするならば、私は彼らを殺さざる負えない。
……裏切りとか、疑いの目とか、そういうのを考えて思い出すのは、あの時の彼らの表情。
信じられないものを見るようで、でも軽蔑して私を遠ざけるようなまなざしでこちらを見据える。
あの瞳は、痛い。
心の奥に突き刺さって、抜けない。
痛くて、痛くて、耐えられないから。
私はいつしか、人の目を見るのをやめたんだ。
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