疑念を抱くは希望故に



「おい」




ラピスが、疲れました。今日は失礼します。と言って部屋を出ていく。

ふぁ…と目元に涙をにじませながら欠伸をすると、そのままドアの向こうへ消える。

そして、それを見計らってXANXUSがスクアーロを睨み付ける。




「なんだぁ!!」




一々大声で反応するスクアーロに、XANXUSは最早お決まりとなっている様に、グラスをきっちり投げつけると、周りが張り詰める様な殺気を出す。




「あいつの能力について、調べろ」




あいつ≠ニいうのは、他でもない。ラピスのことだろう。

ボンゴレに属していないのに、ボンゴレを助けるような動きをする女がいる。噂を聞いたのは、3か月前のことだ。

圧倒的な強さで敵をねじ伏せ、ミルフィオーレを殲滅する。

最初に現れたのは身も凍るような吹雪の晩だったらしい。白く輝く白銀の世界をあっという間に敵の鮮血で紅に染め上げた殺戮者。故に、紅雪。

美しくも恐ろしい異名を持ったその女に興味があった。だから、ヴァリアーに入れた。

だが、女の力は予想以上にすさまじいものだった。ヴァリアー内でも天才と謳われるベルが称賛するのだから間違いない。

味方であれば、これ以上心強いものはない。しかし、敵となれば真っ先に排除しなければならないことであるのもまた事実。

そのためには、少しでも多くの情報が必要だ。




「あいつは、真実を明かそうとはしないらしい。ならば、こちらもそれ相応の対応をするまでだ」




普段のXANXUSならば、相手が自分の思い通りにならないだけで消してしまう。だが、それをしないのはラピスが時折見せる、懐かしむ様な表情を見たから。

自分のことを、U世と呼んだから。




何か裏がある。




自分たちの騒擾の範疇を超える様な、何かが。

ラピスが全て打ち明けるか、ヴァリアーが情報を集めすべてを知るか。

どちらにせよ、ヴァリアーが真実をするまで、彼らの彼女に対する疑念は消えない。

ここは暗殺部隊。

表社会のぬるま湯のような常識は通用しない。

情報を持つという事は、イコール相手の命を握ることと言っても過言ではない。

気を抜けば殺される。

こいつなら大丈夫だ、なんて甘ったれた考えは通用しないのだ。

逆を言えば、ザンザスは無意識のうちに思っているのかもしれない。

ラピスのことを信用してみたいと。初めて見たときから感じる何か特殊な空気。

年は自分よりはるかにしただというのに、まるでたくさんの時を経てきた老人のように悟ったような物言いをする少女。

故に集めるのだ。

彼女が信頼に値する人物なのだと決定づける証拠を。

見つけたいと、願っているのかもしれない。




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