呆れ顔の救世主





「…数だけは無駄に多いんだね」




何気なしにぽつりとつぶやいた言葉。それが、敵の耳にも届いたらしく、激高しながら襲い掛かってくる。

振り上げられた大きな剣に、それをさらに大きく見せる赤い炎。すべてを分解するその炎は、触れればただでは済まないだろう。




でも。

ラピスは、ため息を一つついて腰に手をやると己の武器を解き放つ。

そして、次の瞬間には敵は皆、血にひれ伏していた。

ラピスの武器。それは、金色に輝く一振りの刀。そして、刀を収める鞘もまた金色に輝いていた。

鞘に施された繊細な彫刻は、まるで絵画のようで戦場にはいささか不釣合いだとも思える代物だった。

すっと刀に手を滑らせて、刀に付いた血をぬぐう。




「うーん…ここで待ってれば来るかな?」




一番強い人。と呟いて、空を見上げる。そこには、丸く輝く月があった。

ここら辺の地理にはあまり詳しくない。だから、あちらの方から出向いてもらえるとすごく助かる。そんなことを考えながら、夜空を見上げていると不意にそこに暗い影がさした。

一拍置いて、月光が何者かによって阻まれているのだと理解する。

月の金色の光に変わって私の目に入ったのは、玉座とその四隅に燃え盛る、赤い炎だった。















「ったくなんで俺がこいつのお守りなんか…」




ぶつぶつ言いながらも、木の枝を器用に使い移動するベル。そして、その前を行くフランは相変わらず毒を吐いていた。



「ベルセンパーイやっぱり前行ってくださいよー背中に殺気がいたいですー」

「しししっやだね 脳と心臓どっち刺すか決めてるから待ってろ」



戦場の真っただ中で繰り広げられる言い争いは、まるで子供の喧嘩。でも、その言葉の一つ一つには紛れもない殺気がある。



「ほんと、こんなとこでのんびりやってると紅雪サンに全部倒されちゃいますよー」

「ん?ま、姫は強いからな」



しししと笑うベルに、フランは冷たい視線を向ける。



「さっすが堕王子ーどこに行っても役に立ちませんねー」

「んだと!?」



ドスドスッとフランの背中にナイフをお見舞いしたベルは、あることに気づいて辺りを見回す。

ベルが感じていたのは、血の匂い。

風に乗ってやってきたそれは、紛れもない今この近くで誰かの命が立たれたということがわかる。



「おい、フラン」

「分かってますよーあっちですねー」



そう言って、二人はほぼ同時に方向転換をして、今までの進行方向から右に90度それたところへ向かって木の枝をけった。





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