闇と憎悪と希望と
「…次は、イタリア」
闇の中、悠然と足を進めていたラピスは足を止めてぽつりとつぶやく。
手元の書類に目を落とすと、ふぅと一つため息をつきそれを手から出した炎で焼く。
ゆらめく炎に包まれて、あっという間にそれは灰となって、風にさらわれていく。
「主力戦…だよね」
イタリアでボンゴレの主戦力となると思われるのは、独立暗殺部隊ヴァリアー。
そして、ミルフィオーレは嵐のマーレリング保持者を筆頭に大量の戦闘員を送り込んでいると聞く。
ヴァリアーも確かに強い。
だが、勝てるという確証はない。
「これで、終わりにする」
勝手に、ボンゴレを守って戦って。
傍から見れば迷惑なのかもしれない。
でも、これが私の生きる意味だから。
一人、暗い道を歩きながら、その眼はどこか遠くをとらえ放さなかった。
まるで、黒い空に浮かぶ月に誰かの影を見ているように、まっすぐに見据えて。
目指すは、イタリア。
相棒の武器を片手に、道を急いだ。
心の奥にくすぶる、言いようのない感情を見て見ぬふりをして。
ドクンとひときわ大きく脈打った鼓動。これは、あいつの出てくる合図。
こんな時になんなのだと思いながらも左手で胸を押さえ目を瞑る。
「一体、何の用?」
――――特に意味はないさ、ただ忠告だ
耳障りな低い声が、嫌に真剣な口調で告げる。いつものようなふざけたような雰囲気はそこにはなく、ただただ私を戒めるように言葉は紡がれていく。
――――お前は人間じゃない。
分かってる。それくらいとっくに。
――――お前はボンゴレを守るために存在している。
だから、なぜ今更そんなことを告げる。
――――お前を突き動かしているのは、ボンゴレへの憎悪。そして希望。
やめろ、なぜ今更そんな話を蒸し返す。やめろやめろ。
――――ボンゴレへの憎悪によって僕は生まれ、お前は生きながらえている。
――――ボンゴレへの憎悪がなくなれば僕は消える。僕が消えればお前の持つ力も限界を迎える。それを忘れないことだな
[ 14/64 ][前] [次]
[mokuji]
back