鮮血に身をゆだねて




「はぁ…はぁ…」




真っ赤な血の海の中、眉一つ動かさずたたずむ女をその場にいる全員が呆然と見つめていた。突然、戦場に現れたその女。目にもとまらぬ速さであっという間にあたりを血の海に変えた。

それも、自分たちは傷一つつけずに。敵方のファミリーだけを、始末した。




「お、お前はっ…」




助けられた仲間の一人が声を上げる。女は、色のない瞳で仲間を見ると、何と首をかしげた。




「お前は…援軍か?」




問いかけている男も、それはないとわかっているだろう。確かに援軍を要請していたが、こんなに早く到着するはずがない。それに何より、今は人手不足なのだ。

此処の支部は、規模も小さいし本部に行って即戦力となるような強者もいない。

…言いたくはないが、助ける価値はない。

すると、女は俺たちの心を読んだかのように眉をしかめた。




「…ボンゴレ]世は、そこまで非常な男じゃない」




強い、確信を持ったその言葉。そして、それじゃあと言って踵を返し、その場を後にしようとする。




「ま、待ってくれ!!」




気が付いたら、叫んでいた。そして、唯一自分たちを助けてくれる心当たりのある名を思い浮かべる。




「お前、名前は…」




すると、女はふわりと微笑みながら振り返った。















「紅雪」















紛れもない。

ボンゴレの、救世主。

礼を言おうと、口を開こうとするが、その時にはもうすでに、女の姿は消えていた。





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