唐突な知らせ


「沢田さん!ヴァリアーから通信が入りました!」



そう言って、部屋に飛び込んできたのは戦闘用の身軽そうな衣装に身を包んだイーピン。本来なら、彼女はヒットマンをやめ大学受験に励んでいるはずなんだけど戦力不足に、人員不足。

已む無く、イーピンにもボンゴレの一員として働いてもらってる。




「わかった。すぐ行く」




そう言って、立ち上がると通信室へ向かった。
















『う゛ぉ゛おおおい!!いつまで待たせる気だぁあ!』






通信室に入った途端、耳朶をついた大声に思わず眉をしかめる。

入ってすぐに目に入るモニターに映し出されているのは、銀の長髪の目つきの悪い男。




「ジャンニーニ、ボリュームできるだけ落として」

「か、かしこまりました!」




いつもの事なので、額に青筋を浮かべながらジャンニーニに言う。




「それで、何の用?」



こっちは忙しいんだ早くしろ。と黒いオーラを放ちながら話を促されたスクアーロは若干額に冷や汗を浮かべつつも口を開いた。




『……戦況は、良いとは言えねぇだろう』



少しためらってから、スクアーロが口を開く。何を言いにくそうにしているのかが分からなかったが、ツナがそれがと返す。

スクアーロはそのあと、暫し迷うような素振りを見せていたら、後ろからグラスが飛んできた。




『う゛ぉ゛おおおおい!何しやがんだクソボス!!』




そのあともギャンギャンと何かを言い争っていたが、大声で発せられるスクアーロの声しか聞き取れない。

そして、二度目のグラスが飛んで来た後にスクアーロはやっと話し始めた。




『テメェ覚えてるか…?リング争奪戦の時に現れた女』




その一言で、ツナの肩が跳ねる。忘れるはずがない。

そして、あぁと納得がいく。そう言えば、スクアーロ達は知らないのだ。彼女と自分たちとが、同じ学校に通い、同じ教室で過ごしていたことを。




「その人が何か?」




できるだけ平静を装って答えると、スクアーロは眉間のしわをさらに深くして、呟いた。




『その女らしき人物が、最近暴れているらしい』

「暴れている?」

『ミルフィオ―レの支部が次々にその女に壊滅させられているんだ』




「は…?」




思わず、間の抜けた声を出してしまう。

壊滅…?彼女の手で、ミルフィオ―レが?

何故、と思ったがまるで見当がつかない。十年という歳月はあまりにも長過ぎた。

彼女が、何を思って、何のために行動しているのか。

今の自分たちに、判断することはできないのだ。




「それで…どうしようって言うの?」




彼女の情報を知ることができたのは確かに自分たちには好都合だ。でも、ヴァリアーには何のメリットもないはず。

何か裏があると思い、スクアーロに問いかけると、彼から発せられたとは思わないくらいに小さい声で言った。




『その女をヴァリアーに引き入れる』




そして、言ってすぐにグシャグシャと髪をかきむしる。…まぁ、自分から助けてもらうなどと言うことは、彼のプライドが許さないのだろう。

…だが、今の状況ではプライドがどうのこうの言っていられないのも確か。故に、ツナもイーピンに協力を求めた。




「勧誘…ですか」




そして、ふと思い立って問いかける。彼女の居場所はつかめているのかと。

もちろん、ヴァリアーの事だ。彼女の居場所や、拠点。すべてを把握したうえで、この話を持ちかけてきているものだと思った。だがしかし、予想に反してスクアーロから帰ってきた答えは無謀ともいえるものだった。




『…近々、イタリアでミルフィオ―レとの抗争が起こるだろう。そこに、そいつは現れるはずだ』




スクアーロが言うには、彼女はいつもボンゴレとミルフィオ―レの間で抗争がおこっている場所に現れては、ミルフィオ―レだけを殲滅していくらしい。

ならば、イタリアの主力戦ともいえる戦いの場に彼女が現れないというのはほぼあり得ないだろう。

だがしかし、そんないい加減なやり方で果して彼女が見つかるだろうか。

その旨をスクアーロに告げると、心配ねぇと答える




『とにかく、ヴァリアーはその女を引き入れる。報告はしたからな!!!』




そう言って、ブツンと通信が切れる。

端からツナの支持を仰ごうとなどとは思っていないのだ。ただ、後々面倒なことにならないために一応報告だけはしておく。

変わり映えのしないヴァリア―にため息をついた。



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