過去の君に問う




「十代目!ご無事ですか!!」


「あぁ、何とか大丈夫だよ」




小さく笑って答えるけれど、正直全然大丈夫じゃない。

イタリアの本部が壊滅させられそうだって聞いて、覚悟を決めなければと思った。

でも、覚悟なんて決めようと思ってすぐ決められるようなものでもなくて。

結局オレは生半可な気持ちで戦いに出たから、撃たれたんだ。

そう言ったら、獄寺君にものすごい勢いで否定された。十代目は立派ですって。…揺さぶられた肩、相当痛いよ。




「それより、戦況は?」




このままいくと、ずっと俺のことばっかり言ってそうな獄寺君にそう促すと、少しうつむいた後、言いにくそうに話し始めた。




「あまり、良いとは言えません。各地にある支部もほぼ壊滅状態。…今の所被害がほぼないのは、此処とそれから…ヴァリアーだけです」


「…ヴァリアーか」




ヴァリアーと聞いて初めに思い出すのは、リング争奪戦。そして、そのあとすぐに…思い出すんだ。


消えてしまった、君のこと。


あの時、迷うことなくザンザスのけがを治療していた君。そして、後から聞いた話だとザンザスに言っていたらしい。「終わりと始まりを見極めな。あんたはまだ始まってさえいないんだから」って。それはまるで、ザンザスの歩む道を見据えていたようで。

確かにザンザスはあの後、ヴァリアーのボスとなり十分すぎるほどにボンゴレに協力してくれている。……まぁ、ただたんに自分が暴れたいだけなのかもしれないけれど、ヴァリアーの勢力なしでは今のボンゴレはなかっただろう。

もし、過去に戻れるのならば、君に問いたい。


君の瞳には、何がうつっていたの?

オレには見えない何かが君には見えていて、だから君はためらいもなくザンザスを救えたの?


あの時の君には、君じゃないような空気を感じた。本当は、あの時の君が本当の君なのかもしれないけれど、どこか寂しげに消えていった君。

今どうしているのか。元気なのか。マフィアとして活動しているのか。聞きたいことはたくさんある。でも、それはもう敵わない。

いま、君と連絡を取ればきっと君を巻き込んでしまう。

君のことだから、強くてミルフィオーレとの抗争なんてものともしないのかもしれないけれど、それでも君を巻き込みたくないと思う。




「十代目…」



オレが、考えていることが分かったのだろうか。獄寺君が、すいませんでしたと、突然頭を下げる。彼なりに、気を使ってくれているのだろう。…獄寺君の方こそかなりショックを受けたはずなのに。




「獄寺君…オレ達…いっぱいいっぱい失ったんだ」




平穏な生活。一般人の友達や、知り合い達に危険が及ばないように、極力接触を避けてきた。

……実の、母親でさえも。

そして、あの時から姿を見せない君。



たくさんの人とのかかわりあいを失った。



でも、と続ける。




「進むしかないんだ…これが、オレ達の決めた道だから」




獄寺君が頷く。
















彼らの心の中には、いつも、一人の少女の姿。


かつて、共に過ごした級友。


突然に姿を消した少女。


あのとき残した言葉。


会いたい。


ただ、それだけ




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