いちごのとなり
「篠宮さん、だよね?」



中田先輩は梨萌の横に来ていたりする。



『……はぃ』



梨萌はウルトラスーパー小声で返事をする。


中田先輩は普通に梨萌の横に座る。



(近っ!せめて椅子5個くらいは開けてほしい……)



それは開けすぎだ、といつもならつっこんでくれる茜も今はここにはいない。

自分が話すしか手段は、ない。




「あれ?もう一人の浅羽くんは……」

『き、来てません……。忘れてるのかもしれません………』



一応、サボりと思われてはあれなのでフォローする。



「そう。
あ、なら彼に来週の水曜日は図書室の水道管工事があるから来なくていいって言っておいてくれる?」


『はい……』



(浅羽くんに伝えなきゃいけないのかぁ……。というか早く終わりたい………)



手になんか変な汗をかいてたりする梨萌。


中田先輩はそんな様子に気にすることなく説明をする。


色々教えくれているのだが、緊張で耳に入らない梨萌。


時間が進むのが、やけに遅く感じる。





「―――は右隣ね。
教えることはこれくらいかな」



時計の長針が8回程度回ったところで説明は終わった。


(長かった…。1時間にたったように思えるや…)




ほっ、とため息をつく梨萌。

そして、ようやく中田先輩がどこか行ってくれると思ったが




「まだみんな説明中だね。終わるまでなんか話そっか」



『…ぇ』




中田がそんな提案をしてきた。

よく見ると、周りはまだ説明中の先輩が多数だったりした。

1年生はまだ中々飲み込めないのだろう。



正直、梨萌としては早く去ってほしいがそんな事を先輩に言えるはずもない。


中田も何も言わない梨萌を見てOKととらえたのだろう。話を始める。



「篠宮さんは好きな本とかある?」


『本……。あ、りんごのとなりとか好きです……』



読んできた本の中でも特に好きな本をあげる梨萌。

結構マイナーな作者なので知らないかな、と思いきや




「あー。あの人の本いいよね」


意外にも中田先輩は知っていた。



『……先輩はあの人の作品の中で何が好きですか?』


「んー。りんごのとなりもいいけどそれの番外編の方も好きかな」

それは、梨萌が読みたいが読めていない作品だった。


『それ私読んだことないんですよね。どこの書店も売ってなくて……』




その話を聞くと、中田先輩はあぁならと言い


「貸そうか?」


と言ってくれた。



『え、でも…。悪いですし……』

「大丈夫大丈夫。
読んだっきり再読してないから、本がかわいそうだし。
それなら他の人に読まれた方が本としての人生をまっとうできるでしょ」


『・・・なら……』


「うん。明日にでも持ってくるね。
…あ。そろそろみんな終わってきたね。じゃあまた明日」


『はい』



先輩はそのまま前に出ていった。



(最初緊張したけど、結構優しいなぁ……)


梨萌にとってはかなり珍しく、男性に好印象を抱いた。

きっと、中田先輩の人のよさと喋りやしさが影響したのだろう。



「じゃあ終わります。礼」


その日は、それでお開きとなった。




8/11
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