その晩、海は梨萌に貸す本を探していた。
彼は面白い本ならジャンルを問わず何でも読むタイプで、しかもあまり几帳面ではないので本棚は本やらマンガでぐっちゃぐちゃになっている。
よって、1つの本を探し出すのにもかなりの苦労だ。
(でもまあ、あの作家好きとかいう人珍しいし、ここは何時間かけても探し出したいな)
なんて思いながらその本を探す。
と
「邪魔すんぞ、海」
「・・・コウ、人ん家入るときはチャイムしようね」
背後に、中学の同級生のコウがいた。
高身長の目つきが悪いこの親友は、困っている子供を助けようとして逆に泣かれたという伝説をもっている。
内面は優しいんだけどな、と中学で同じバスケ部だった海が思う。
高校は離れたが、今もバスケ部に所属しており、その実力は各校が認めるほどらしい。
そんな、いつもは仏頂面なコウが、今日は妙に顔が浮かれている。
「何かいいことでもあったの?」
「うん。すげーいいことあった」
「へー。まあ俺は忙しいから・・・・」
「なんだよそれ。聞いてくれよ」
「・・・何があったの?」
どうせ、以前から気になっているとかぼやいていた子とのことだろう。と想定する。
「いやな、前言ってた子とアドレス交換した」
そう言い、ケータイをでーん、と見せてくる。
「へー。奥手なコウにしては珍しいね」
棒読みで答える海。
「いやまあ、正直に交換してくれとは言えなかったけどな・・・」
「???へーー・・・。まあ、俺本探してるから」
「この中からかよ・・・。なんでこんなに本あるんだ?」
そういい、コウは適当に本棚から本を取り出す。
「まあ、コウとは違ってスポーツバカってわけじゃな・・・・・あ!それだよ!」
「は?」
「コウの持ってるそれ!探してたやつ!」
偶然にも海が探していた本を手にとっていたコウ。
「え?そうなのか?」
「うんそう!ありがとう!」
コウから本を受け取り、大切にリュックに入れる。
ぴろりろりーーん♪
コウのケータが鳴る。
「あ、その子からメールきたぞ!
かかか、海!どういう返信したらいいんだ!?」
てんぱっているコウ。
「知らないよそんなこと・・・」
「で、でーこれーしょんめーるにしたらいいのかっ!?」
「デコレーションメールね。あと、コウはデコメは使わない方がいいと思うよ。
キャラ的に」
「わ、わ、わかった!」
なんだか見た目とそぐわないなあ、と呆れる海であった。
tRainのコウが登場です(^^)
あと海の読み仮名は『かい』です
9/11