教会のミモザ | ナノ



追いかけてどこまでも

■ ■ ■


 雨粒が激しくガラスを打ち鳴らす。
 教会全体が震えているのではないだろうかというほどの大雨の中、ファイが鋭い声をあげたのが発端だった。


「シャオラン君と、小狼君がいない……!」
「!!」「えっ?!」「は、」
 全員が思い思いの反応をする中、ノザが大きく一歩踏み出す。

「いないって、どういうことだよ、ファイ」
「いつも通り、モコナが起こしに行ったんだけど……彼らのベッドは空っぽだったらしい。それだけじゃない、荷物も何もかもなくなってて」
「この大雨の中、出てったっていうのか」

 チッと黒鋼が舌打ちする。モコナがぶるぶると体を震わせた。

「たいへんだよ、あくまに、あくまに2人とも狙われちゃう!」
「そんなことはさせない!」
「「待って(待て)ノザ!!」」
「ぐえっ」

 今にも教会から飛び出しかけたノザを、双子が襟首を引っ掴みとどまらせる。

「そうだね、まずは手分けした方がいい。……黒りんは、1人でいいよね」
「ったりめーだ。何のための自警団だと思ってやがる」

 鼻を鳴らした黒鋼が、すらりと腰から剣を引き抜いた。

「「わー黒りんかあっこいいー」」
「そこ2人棒読みで言うんじゃねえ!今そういう空気じゃねーだろ!」

 ぽちぱち気のない拍手をする2人(いうまでもなくファイとノザ)に、ガーッと黒鋼が吠え返す。
 騒がしいそこへ、神威がすっと歩み出た。

「俺は、ノザと行く」

 そこへ、同じくすっと進み出る昴流。

「違うよ。ノザは、僕が一緒に連れていく」

 わー、とニコニコ見守るファイの前で、バチバチッと冷たい火花が散る。

「……うーん、俺としてはノザに留守役がてら、大人しく教会にいて欲しいとこなんだけどー」
「ガキ扱いすんなよ、ファイ。それに留守番ならモコナがいるだろ」
「だーよねー。……あ、」

 未だばちばちと無言で火花を散らす双子、ん?と首をかしげるノザの前で、ぽん、とファイが手を叩いた。


「じゃー、ノザは俺と行けばいーんだー」





「「……は?」」

 神威と昴流の低い声が、響いた。





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