罪深き兄妹達
■ ■ ■
「俺がアルヴィス好きなのって、きっと彼は絶対俺のことを好きにならないからなんだよねー」
グチャッ、と肉が潰れる音がする。
突き刺さるレイピア。べったりと付着する、血と肉片。
「……兄さん、目こぼしが、」
「?あれ、ほんとだ」
ピクリ、動きかけた手に、ためらいなく深々と突き立てられる、銀の刃。
「6年前、俺の、ってかファントムの前に飛び出したのを見た瞬間、わかっちゃったんだ。この子は絶対、何があっても俺みたいにはなんないや、って」
「……。」
「だからすげー好き。めちゃくちゃ綺麗でカッコよくて、見てるとすごく安らぐし、惨めになる。俺ってきたないなあ、って」
「……ドMですかー?」
「いやそんな趣味はないよー。あ、でもアルヴィス相手なら俺SでもMでも」
「そこまで答えろとは言ってないですー」
兄のアウトな発言を遮り、ミモは手の内から血塗れのロッドを消し去る。
「任務、完了しましたー。この町で息してるのは、私達だけでしょうねー」
「オッケーオッケー。優秀な妹持つと、兄は楽できるなあ」
「私よりたくさん労力使ってるわりに、面白いこと言いますねえ」
ゼノウは、無表情に答える妹の横顔を見る。
言外に含まれた毒に、へらっと笑った兄は、己の愛用するウェポンアームを見下ろした。
血と肉と、それから。
「……俺は絶対、天国なんていけなんだろうなあ」
「それなら、私も同じですかねぇ。なんたって殺戮に人生捧げちゃってるような奴に、心奪われてるんですから」
罪深いですねえ、私達。
そう呟きうっすら笑うミモに、ゼノウもまた、微かに微笑んだ。
「……そーだなあ」
(「……っていうかまじでファントム好きなの?いやおにーちゃんは止めないけどさあ、」
「別に好きなんかじゃないですよー」
「いやここで謎のツンデレ発揮しなくていいから」)