然らば、メルヘヴン?
■ ■ ■
「……キミが持っていたのか。プリフィキアーヴェ……」
「ギンタがくれたんだ」
微笑むファントムの胸元で、鈍く光る銀色の鍵。
対するアルヴィスは無表情のまま、静かに答えを返した。
「最後まで、あの子はボクの前に現れてくれなかったな。ギンタにボクを止めさせようとしたんだね……」
虚空を見上げ呟くファントムの横、
突如カツンと進み出る、小さな影。
「……ちょっとー」
「……!」
「あの子って誰ですー?私、聞いてないんですけど」
「ミモ……」
突如現れた彼女に、ファントムは一瞬、驚いた顔をする。だがやや間を空けて、彼は微かに微笑んだ。
「ボクが最終決戦で負けた時、この城から出るよう言ったのに。ゼノウ君を連れて」
「あいにく私はあのバカ兄と違って、頭単純にできてないんですよー」
あっさりばっさりそう言って、ミモはアルヴィス、そしてファントム、最後にその胸に埋まる鍵へと視線を動かした。
「……『後でボクもいくから』なーんて言葉に、そう簡単に騙されてなんてあげませんからー」
「……ミモ」
「ヒドイ人ですねーほんと。元恋人の話も別れ話も、私なーんにも聞いてませんよ?」
「ミモ」
「私と一緒に、」
口元をゆがめた、初めて見るような半泣き顔で、ミモは吐き捨てるようにそう言った。
「生きてくれるんじゃなかったんですか?」
「ミモ……」
思わずアルヴィスも唇を噛んだ、
その前で。
「……えっ、ならさー」
突如、ひょっこり場違いな声があがり、
「ミモと一緒に生きればいーじゃん」
底抜けに明るい顔をした、ゼノウが現れた。
「「「「……は?」」」」