切望
■ ■ ■
その身体はシーツに押し倒せば、
いつだって細く埋もれてしまった。
「……沙良」
するり、彼の首を彩る黒いリボンをゆるめ、ほどく。
何も言わずに見上げる金は、いつもと変わらぬ光を宿していたー不動。
その瞳を揺らがせたくて支配したくてーけれど、それは叶わないのだ。所詮、自分には。
骸は切なく口だけで微笑み、その黒髪をすく。
戻れないのだとしたらーなぜ惹かれてしまったのだろう。わからない。わかるはずもないのに。
髪の毛から手を放し、ゆるゆると白い肌に触れる。
淡くなぞり、白い頬に、首に、肩に、腕にーただ指先を滑らせる骸を、沙良は何も言わず見つめていた。
いっそ残酷なほど口を閉ざしたままの彼に、しかし骸もまた、何も答えることは無い。
横たわる彼の上、覆い被さったままでー
ただひとつだけ、許されるなら望むのだ。
このままー時が止まってくれはしないか、と。