背徳の華 | ナノ



来訪

■ ■ ■


「久し振りだね。"ボンゴレの華"」
「……白蘭」

唐突に自分の部屋に現れた男に、沙良は僅かに眉を寄せた。
だがたったそれだけで、あとは何事も無かったかのように書類へ目を落としてしまう。

「相変わらずつれないなあ。仮にも"華"なんでしょ、可愛らしく笑ってよ」
「誰に何を言ってるんだ?あと用が無いなら出て行ってくれ」

口をつぐみ無言の圧力をかけ始める沙良に、白蘭はニコリと笑みを浮かべた。

「ボンゴレの華……初代から存在した、才能ある美しい少女。或いは女。その容姿で他人を惹きつけ武力でもって敵を仕留め、ファミリーの結束を固める存在。合ってる?」
「僕は辞書じゃないんだが。白蘭」
「ああ、沙良チャンは違うよね。…れっきとした、男だもの」
「その通りだ」

ぺらぺら、歩みながらも喋り続ける相手に目もくれず、沙良は黙々とペンを動かす。
その黒い前髪が手の動きに合わせて揺れるのを眺めながら、白蘭はくすりと笑ってみせた。

「…何」
「動乱のもと」

端的に言い放った白蘭にー沙良は顔を上げ目を細める。
見慣れた金色が射るように光るのを見て、白蘭は満足げな表情をした。

「そうだよね、"華"はいつか枯れなきゃいけない。……長くいすぎればいすぎるほど、こんどは仲間内の波乱を招く。いや、もう招いているのかな?」
「白蘭、」
「沙良チャンも気付いているんでしょ?君を見る周りの目が、少しずつ変化していることを」
「びゃく、」
「気を付けないとね」

バシッ、

すぐ側まで近付いていた白蘭がー唐突に、机に両手を付き、身を乗り出す。


「ーその内、ロクでもないことになっちゃうよ?」






「…わざわざそんな忠告をしに来たのか。ご苦労さん、無駄足だったな」
「沙良チャン」

素っ気なく言って再度ペンを走らす、その姿に白蘭は薄く笑う。


「じゃあ例えばー僕も君に惹かれてる、って言ったら?」


ピタリ、ペンの動きが止まった。

「……興味、無いな」
「それはそれでヒドイなあ」

あっけらかんと笑った白蘭が、くるりと背を向け扉へ歩き出す。

「じゃあね、沙良チャン。また、そのうち」


最後に、端的にそう告げて。






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