予感
■ ■ ■
"彼"がリボーンに連れられやって来たのは、
ボンゴレがやっと安定してきた時期だった。
『こいつが総仕上げの元だ』
そう言うリボーンの横にいたのは、
少女かと見まがうほどにひどく細く色白い、
そして、目を惹くー美しい少年だった。
思い返し、目を閉じる。
随分遠く感じるあれから、数年。
"ボンゴレの総仕上げ"はー
あの日最後にリボーンが告げた通り、
静かなさざ波を立てている。
『…いつの時代の"華"も、ある程度ボンゴレの結束を固めるのに役立つとー必ず、奪い合いの標的になる』
「……沙良」
目を開け、綱吉は静かな部屋で1人呟いた。
「君が、ボンゴレを壊してしまう前に……」
俺が、ケリをつけなくては。
そっと手を伸ばしたその先、机の上に置かれた銃。
ー俺が、惹かれてしまう前に。
ささやかに付け加えられた言葉はーついぞ誰の鼓膜を震わすこともなく、かき消えた。