背徳の華 | ナノ




■ ■ ■


『…愛しています』
そう囁けば淡く微笑むその顔を、
彼の幸せをー
けして、壊したかったわけではなかったのに。


『……骸』
『はい』
『僕にはー答える資格が無い』

そう笑みを孕んだ言葉の後ろで、
閃いた微かな嗚咽の音を、聞き逃すべきではなかったのに。





『すきなんだ。…沙良、君が』
『雲雀…』
強引に覗き込んだ瞳の奥で、
金色の光はいつも困ったように煌めいた。

『…雲雀、僕は……』
『わかってる』
『…それなら』

揺らいだその瞳の奥、
泣きそうにゆがんだ彼の痛みにー気が付いていたはずだったのに。




「……沙良」

指先で触れた白い頬は、あの日と違い傷ひとつなく、血の跡もなく。

「…沙良、目を…」

呟きを漏らした雲雀の下、
目を閉じたその顔はあどけない。

「君が…」
「僕は…」

重なる2つの声はー
白いベッドで眠り続ける、動かない彼に落ちていく。
切実にー祈るように。
掠れたその声音の裏、わずかに零れた涙を押し殺して。


「誰よりも愛おしいのです」
「ずっと、すきなんだ」





同じベッドの両側に佇み、
頬に一筋の雫の痕を残す2人の声は、
やはり奇しくも全く同じ響きをしていてー。


その血が滲むような声音は、
あまりにも切なく悲しく、狂おしくさえあった。





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