駆け引きの始まり
■ ■ ■
「ーーそれで、話って?」
「おやおや」
カチャリ、英斗が出したカップを取って、六道骸と名乗った相手はうっすら笑った。
「作法だとかマナーだとか、そういった言葉があるじゃないですか。この場合、もう少し核心から遠ざけた話題から入るのが普通ではないのですか?そう例えばーー天気の話だとか」
「ふざけたことべらべら喋らないでくれる」
「その言い方、雲雀恭弥によく似ていますね」
危うく手からカップが転がり落ちるところだった。
「ーーっ、なんで、恭弥のことを、」
「やはり恋人どうし、似てくるものだということですかねえ」
「答えろ!」
ガチャン、テーブルを叩いた拳から伝わった振動が、カップを揺らし中身を跳ねさせる。
注いだばかりのコーヒーは、いともたやすく木のテーブルに染み込み黒い痕をくっきり残した。
「急いてはことを仕損じる、そうは言いませんか?」
やれやれ、どこかそう言いたげに肩をすくめて、六道骸はこちらを見上げた。
「ですが確かに僕も焦らしすぎました。単刀直入に申し上げましょう」
「……何の話だ」
「ねえ、小野英斗君、」
薄い唇が、囁くように形作った。
−ーきみ、愛しい人を生き返らせたいとは思いませんか。