プロローグの裏側に
■ ■ ■
『……人間というものは、本当に愚かなものだ』
ぼんやりと、目を開ける。
どこかはっきりしないぼやけた世界に、ひとつだけはっきりする黒い塊。
『まあ僕としては、……そのくらい愚かな方が、助かりますが』
……あれ。
一体ここは、どこだろう。
『さて、雲雀恭弥の契約対象……君は、めざめることができますかね』
おかしいな。
どうして、目がさめてしまったのだろう。
『いくら僕が優秀と言っても、本人の意志がなければどうすることもできない。……小野英斗、君は、彼に応えることができますか』
……ああ、そうだ。
きっと、恭弥の声が聞こえたからだ。
懐かしい、恭弥の――初めて聞く、嗚咽。
『……おや』
目を、さまさなければ。
『これはこれは……クフ』
だって、恭弥の声が聞こえたんだ。
『驚きですね。人間というものは、本当に理解しがたい。まあ、いいでしょう……それなら僕は、その心を利用し多くの契約を交わすまで』
目がさめたのは、きっと、その声が聞こえたからだった。
恭弥の――苦しそうに押し殺された、その声。
目がさめてしまったのは、あなたの声が耳に届いてしまったから、だった。