真実の意味を
■ ■ ■
「……え?」
わけがわからなかった。
言われた言葉の全てがわからず、ただ口を開ける。言葉が見つからない。
体を包む体温は震えていた。やっぱり震えていたのは自分ではなく、雲雀だったのだ。
「……気付いて、いたんだ……君が、おかしいと感じていることは。きっと、そうだろうと思っていた。それでも……それでも、まさか”僕を生き返らせた”と思っているとは、……気付かなかった」
指先はぴくりともしなかった。
今こそ震えてもおかしくないのに、なぜか体は微塵も動くことはなかった。
自分の体温すら、感じられない。遠い。
「……英斗……僕が、悪かった。全て、僕が間違えたんだ」
掠れた声は、苦しみに満ちていた。
「英斗……君を生き返らせたのは、僕だ」
――思い出した。
『……行ってくるねー、恭弥』
『僕がオフだってのに、君は任務とはね』
『なになに、そんなに俺と休日を過ごしたかった?恭弥』
『早く行きなよ』
ひらひら。ため息をつき私服姿の雲雀が右手を振る。
照れ隠しの滲むそのそっけなさに、英斗は思わず口がにやけた。
『……何にやにやしてるの馬鹿』
『なんでもありませーん』
トンファーの鉄槌が落ちる前に、ドアの向こうへ体を滑り込ませる。
『あ、俺がいない間の水やり、任せたから』
『はいはい。もうすぐ開花時期って、君最近それしか言わないからね』
『凄い花畑が完成するんだからな!楽しみにしてろよ恭弥』
『仕事遅れるよ。獄寺隼人にまたどやされる』
『つれねーの!じゃっ、行ってくるからな』
『いってらっしゃい』
なんだかんだ言いながら、雲雀は最後はちゃんと見送ってくれるのだ。
玄関でくるりと振り返り、英斗は右手を勢いよく振る。
『恭弥のとこ、帰ってくるからー』
『むしろ他にどこに帰ってくるって言うの』
呆れたような黒い瞳を見たのは、それが最後だった。