お題 | ナノ
「あなたの愛人にしてください」

■ ■ ■


「……は?」
バサッ、と雲雀の手から雑誌が落ちた。


表紙を見れば、『月刊・小動物の神秘を探る』。
相変わらず可愛い物を読んでいる人だ、と理香は思う。どうでもいいけど。


「…ですから、」
理香は長い髪を耳にかけながら繰り返す。
辛抱強く、はっきりと。


「私をあなたの愛人にしてください、と申し上げたんです。雲雀恭弥」




次に雲雀の手から滑り落ちた雑誌は、『月刊・七不思議の極地』だった。






「……一応聞いておこう」
「はい」
「なぜ愛人なの」
「ハイ?」
「…なんで突然、愛人、なんて」
「ああ…そうですね、理由説明が遅れました。申し訳ありません」
「…うん、で?」
「先日キャッバローネから交際を申し込まれまして」
「………………は?」
「私がその手のことについて専門外なのは、あなたもよくご存知だと思いますが、」
「……ちょっと待て、キャッバローネ?…跳ね馬?」
「おそらく私がボンゴレ雲の守護者の秘書、という要(かなめ)の立場にいるということも関係あるのでしょう。同盟強化とか」
「あの人にいつ言われたの?僕知らなかったんだけど」
「 これから勢力を増すボンゴレと、これ以上ないパイプを持っておきたいんでしょうね」
「…あの人がそんなこと考えてるわけないじゃないか。絶対無いね、本命狙いだ」
「ですがそこで考えたんです、私がキャッバローネと交際を始めたら、あなたの秘書業務が怠るでしょう?だからお断りしたくて」
「え…ああそう。で?」
「でも相手は一大マフィアのボス、穏便にかつ互いの面子を潰さないようお断りするためには、」
「うん」


「私が、あなたの愛人になればいいのではないかと」





「……あのさ」
雲雀はこめかみを押さえて呟く。
「はい」
目の前には、いつもと変わらない顔でこちらを見上げる有能な秘書。自分の考えが間違っているなどとは、欠片も思っていなさそうだ。
…頭が痛い。

秘書と上司がという立場的なモノはいいのかとか、間違いなく跳ね馬は本気だろうとか、交際申し込まれてそこまで打算めいた考えを巡らすその頭の中身を見てみたいだとか、言いたいことは山ほどあったがぐっとこらえた。
そしてーただひとつ、その手のことに疎い彼女にも理解できそうな言葉を、口に出す。


「…それって、恋人じゃあダメなの」




「……はい?」
珍しくきょとんとした顔になった理香を見てー雲雀は地の果てまで鈍感なこの秘書に、まずは『恋人』の説明を叩き込みにかかった。



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