お題 | ナノ
My home.

■ ■ ■


足が重い。
纏わりつく血の匂いに、疲労感が増す。

…嫌だな。

この職につくようになってから、強く思う。
いや、職は関係ないか。きっと、どんな人間もどんな大人も思うのだ、仕事帰りは軽く、そして辛い。
解放された喜びと残る疲労。自分の場合は、罪悪とも呼べるかもしれない。

嫌だな。

そう思う。
こうして帰路を急ぎながらも、きっとまたすぐあの重たい時間はやってきて、自分はまた決まりきった手筈を繰り返して、いや、決まりきっているなら良いかもしれない。時たま突発的に予想外に、苦難はやってくるものだから。

明日もあさってもしあさっても、休息を挟んだとしても、その後すぐに訪れる同じ重たい時間。
つかの間の休みなんてすぐ消え去ってしまう、だからー。



ガチャリ。

ドアノブを回す。




「ーおかえり、伊織」




一瞬、ほうけたように玄関を見つめてー体が、緩む。温かくなる。



「……ただいま」




ただいま、我が家。

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