呼び方
■ ■ ■
どうでもいいことばかりペラペラ喋る人だ、
と、骸は思う。
「…でね、その時ヒバリさんの匣兵器がね、」
ペラペラペラ。
よく動く唇を眺めながら、ぼんやり聞く。
「…私思うんだ、ツナのナッツもね…」
こちらの表情など気にもとめない様子で、
カフェラテのカップを前に彼女はしゃべる。
「そこで隼人くんが言ったんだ、…」
ふと、顔を上げる。
「…だから私言ってあげたんだけど、」
ハヤトクン。
先ほど、確かにー彼女は、そう言いはしなかったか。
「…あっそうそう、山本くんも同じでね…」
山本武は、名字呼びのようだ。
…だからどうだと言われても、困るのだが。
「…そしたら隼人くん怒っちゃって、周りぜんぶダイナマイトで爆発して、」
…チリッ。
やはり、名前呼びのようだー彼だけ。
「ツナが隼人くんおさめなかったら、きっと…」
「理香」
立ち上がる。
カフェラテをすすろうとしていた彼女が、目を丸くしてこちらを見上げた。
「どうしたの?骸」
「……いえ、なんでもありません」
「?そう?」
不思議そうに首をかたむけて、理香はカップに口付ける。
再び席に座り込みながら、骸は彼女にばれないよう、こっそり影で息を吐いた。
骸。
名前ーそれも、呼び捨て。
「どこまで話したんだっけ?あ、そうだ、それで…」
延々と続きそうな理香のおしゃべりを聞きながら、骸は自分もカフェラテをすすった。
平然を装いながら、内心で思う。
ー呼び捨ては自分だけか、と。