Roommate! | ナノ
今日から3人!

 前回の要約:寮の一部がぶっ壊れたせいで、悠馬の部屋に2人のルームメイトが来ました。



「……で、ここあなたのベッドです六道先輩……て何してるんですか」
「移動させてるんですよ、悠馬君の隣に」
「なんでですか意味不明」
「もちろん、隣で寝るためです」
「もちろんの使い方が間違ってます」
 ため息をつきながらズルズル、とベッドを戻す悠馬。抵抗する骸。
「いいじゃないですか!それともアレですか?これはまさか1つのベッドで寝床を共にしようとかいうお誘いブホォ」
「そろそろこっから投げとばしますよ」
 ちなみにここは地上3階である。
 悠馬の鉄拳を受けた骸はヨロヨロしていたが、やがてしゃきっと背筋を伸ばし元の威勢を取り戻した。
「……まあとりあえず、」
「え?」
 すっ、と突如正座する骸に、悠馬は戸惑いを隠せない。

「……今日からよろしくお願いしますね、悠馬君」

 ぱちぱち、とまばたきを繰り返し、悠馬はぽかんと口を開けた。
「え、なんですか?!日本式・物の頼み方、でしょうこれ?!」
「や、確かに……てかそれ土下座だけど……いや、そうじゃなくて」
「なんです?」
 何か変でしたか?と眉根を寄せて見上げる紫の目に、悠馬は不覚にもどきりとしてしまった。なんだコレ。

「……いや、六道先輩も常識をお持ちだったんだなあ、と」
「君何気に失礼ですよね」

 立ち上がった骸がむすっと唇を曲げる。
 正座していた時は当然低かったが、こうして向かい合うとやはり相手の方がずいぶん背が高い。やっぱ1年先輩だもんな、高いなムカつくなあの頭のふさ引っこ抜きたいなーそんなことをぼんやり思いながら悠馬が見つめていれば、なぜかふっと笑う六道骸。
なに笑ってんだこいつ、とじっと見返す。
 と、とても柔らかに骸は手を上げ、そっと指を悠馬の顎にかけた。そのまま、それはそれはなめらかな動作でくいっと上を向かせる。

 は?

 あまりに突然の出来事にあぜんと見守る悠馬の前、骸はやや目を伏せ当然のように整った顔を近づけ――。


 ドゴッ!


「最悪。この僕が群れるだなんて」

 はっと振り返った悠馬の後ろ、ドアを開けるというより破壊する音が響いた。
 いっしょに降るのは、この上なく不機嫌そうな低い声音。
「ここが野々原悠馬の部屋?」
 そう言いながらスタスタと中に入ってきたのは――
 
 黒い学ランをはためかし、きゅっとつり上がった瞳に銀のトンファーを携えた、私立並盛高校2年17歳、そして風紀委員長を務める――雲雀恭弥。

 高校に進学しても相変わらず学ランを愛用し、中学と変わらぬ王者の座に君臨する彼もまた、成績優秀眉目秀麗、不埒な輩を一瞬で片す最強最悪の男。
 これまた、噂が尽きるはずもない。
 で、よりよって、このとんでもない先輩が――。

「……もう1人の、ルームメイト……」
「何?野々原悠馬」
 ぼやいた悠馬に、鋭い眼光をやる雲雀。
 ちなみに足元には悠馬のひじ鉄を喰らい、額から煙を出した骸が倒れ込んでいたりする。
「よりによって君と一緒になるとはね……」
「それはこっちのセリフです先輩」
「何?喧嘩売ってるの?」
「なんでそーなるんですか、俺はただ妥当な感想を……」
「喧嘩なら買うよ」
 うっすら笑う雲雀の手の内、ギラリと光る鈍色のトンファー。
「今日こそ君は咬み殺す」
「えっ嫌です」
 ビュオッ、と振られたトンファーはまっすぐに悠馬目がけて下ろされ、しかし、

「やめてください雲雀先輩、今何時だと思ってるんですか寝ましょうよ」

 すばやく後ろへ飛んだ悠馬は、何も変わらぬ態度で両手をひらひらさせる。
「……ふん、相変わらずだね。君のその反射神経」
「避けられるだけで攻撃はできませんよー」
「僕のトンファーを避けられるだけでも十分だよ」
 にやり、笑い雲雀は得物をおさめる。悠馬は深々とため息をついた。
「……もー、なんでこの2人がよりによって……」
「悠馬!」
 ガバリ、ここで突如起き上がった骸が叫ぶ。
「ひどいじゃないですか!いきなりこめかみ狙うだなんて……!」
「それで済んだことに感謝して下さい」
「うわ君とも一緒なの?殺す」
「えっ雲雀君?!なぜ君がここに、って、なっ?!」
「ちっ……どうして避けるかな……」
「そりゃ避けますよ!えっ、まさか君も悠馬君の……?!」
「君も同じとか、退屈はしなさそうだねムカつくけれど。ほら武器を出しなよ」
「雲雀先輩、頼むんで部屋で戦闘しないで下さい」
 これ以上寮を壊す気か。
 長々と息を吐き出し、悠馬は天井を仰ぐ。
 このろくでもない2人と相部屋、
 まあとんでもない日々になりそうだ。





「三叉槍が天井につっかえるんですけど?!」
「残念だったね。トンファーの方が短くて振り回しやすい」
「だから部屋で暴れるなって……」


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