Roommate! | ナノ
今日から3人?

 人生は、思いがけない事が多すぎる。



「……って訳で今日から3人だ。がんばれ」
「無理ですシャマルせんせ」
 悠馬の真顔に、壁にもたれたシャマルはにやりと笑う。
「そりゃ男3人なんてむさ苦しくてオレなら死ねるが……お前ならいける。気合だ悠馬。がんば」
「人ごと感ハンパないんだけど」
「しょーがねえだろー、女のコ3人ならまだしも野郎3人の部屋とか興味無さすぎて一生行かねえよ」
「寮長仕事しろ」
「るっせーな、外じゃなかっただけマシだと思えよ」
「いや俺のせいじゃないし……」
 悠馬はため息をつき、がしがしと頭をかいた。本当にどうしようもない。

 寮の片隅、なぜか大規模な爆発が勃発し(本当になんでだ)、建物の一部が崩壊したのは2日前。
 幸い悠馬の部屋の方はセーフだったが、何人かは当然屋根無し(運が悪いと壁無し)になった。
 まさかハイさよならと生徒を外に放り出すわけにもいかず、何人かにバラけ無事な部屋へと避難させられたのだが――。

「なんで俺、よりによって先輩となんです?」
「そりゃー、お前がいい奴だからだ」
「しかも2人も」
「お前いい奴だもんな」
「しかもよりによって六道先輩と雲雀先輩」
「いい奴だからな」
「洗脳しようとするのやめてくれます?」
 俺はそんなの乗りませんよ、とどこまでも冷めた目の少年に、シャマルは口元をつり上げ肩をすくめた。
「まあまあ、社会勉強だと思えって」
「しょっぱなからハードルが高すぎます」
「それにお前、六道と仲良いだろ?」
「仲良い?向こうが勝手に……」
「悠馬くんっ!!!!」
 顔をしかめて言いかけた、悠馬の頭にいきなり抱きついてきたのは――。

 ゴンッ。

「イタッ!」
「こんばんは六道先輩。今日も元気ですね」
「痛いですよ悠馬君!なぜ避けたんですか僕のホールドを!」
「だから避けたんだよ」
 壁から頭をひっこぬき、赤い額をさらしながら叫ぶ紫頭の青年に、悠馬は真顔で言い放った。
「相変わらずのツンっぷりですね。もっとデレてもいいんですよ?」
「シャマル先生マジ無理です。こいつと相部屋とか本当に無理だから」
「こいつとは何ですか仮にも先輩に向かって」
 顔を近づける相手の額をぐぐぐ、と全力で押さえつけながら振り向く悠馬に、シャマルはもはや呆れた笑みしか出てこない。


 紫髪の(黙っていれば)美青年、私立並盛高等学校2年・噂の尽きない17歳――通称、六道骸。
 細身の体にブレザーをゆるく着こなし、勉強運動はてまた悪絡みするアホな輩の一掃も巧みにこなす。
 そりゃ噂も尽きないわけだ。
 しかし、そんな絵に描いたような奴が何を血迷ったのか――彼は、野々原悠馬が大好き(自称)なのである。

「君と同じ部屋なんて……!生きてきた甲斐があったというものです」
「そこまでですか六道先輩」
「ええ!それはそれは!」
「良かったデスネー」
 ぎゅうぎゅう頭に抱きつく骸に、死んだ魚のような目で答える悠馬。
 その目に懇願と恨みがこもっているのを見、シャマルは苦笑し薄情にも背を向けた。
「荷物は自分で運べよ六道。さて、俺はかわい子ちゃんと遊んでくるかな〜」
「ちょっ待てよ寮長、そもそももう1人、」
 慌てて手を伸ばした悠馬の前、「じゃあな〜」と手を振るシャマルの背中はあっという間に遠ざかっていった。

「……こんな時だけ足が速え……」
「何か言いました?」
「その頭のふさ抜けろって言った」
「酷い」


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