こんばんは、クラスメイト
「あ」
「え」
ドアを開けたら、いきなり誰かとご対面した。
「……つな?」
「あ、野々原くん。こんばんは」
にこ、と困ったような笑顔で頭を下げるツナ。通称、沢田綱吉。
威嚇体勢の獄寺隼人と朗らかスマイルで天然ぼけな山本武、この2人と常にいっしょにいる同級生だ――ちなみに、クラスがいっしょだったりする。
「……ええと、何?」
悠馬の部屋のすぐ真ん前、おそらくノックをしようとしたのだろう、中途半端に手を上げた状態で固まっているツナへ向けて首をかしげる。確か、彼の部屋はもっと離れていたはずだ。そう、ちょうどこの前、爆発が起きたあたりの――。
「こ、こんな夜分遅くにごめんね」
「へ、いやそんなんどうでもいいけど……」
怒ってもないのにおどおど謝り出す相手に、悠馬はますます首をかしげる。
どうせ毎晩非常に煩い先輩方に辟易している立場なので、別に夜分だろうとたいして悠馬は気にしない。それより、この夜更けにツナがやってきたことの方が謎だった。
ツナとは別に仲が悪いというわけでもないが、夜に部屋を訪れるほど親しいという間柄でもない。
宿題のたぐいなら獄寺や山本を頼ればいいだろうし、と思ったところで、ツナがガバッと頭を下げた。
「ご、ごめんなさい!!」
「?!」
突然土下座しんばかりの勢いで謝り出すツナに、悠馬は思わず一歩踵を引いた。
90度近く腰を折りぺこぺこするツナの様子は真剣そのものという感じだが、悠馬には謝られる理由が見当たらない。っていうか何これちょっと怖い。
「……え、ええとツナ。とりあえず顔を上げて……」
「本当はもっと早く謝りに来たかったんだけど……オレ、怖くて……」
「へ?え?ええと、何が?」
まったく話が見えてこない。悠馬の頭にはハテナマークが増えていくばかりである。
「こ、この前の爆発……」
「ばくはつ……?あ、ああ、寮の?」
至極平和だった悠馬の部屋に、不穏の塊みたいな先輩方が来た原因だ。
「それ……」
とても困ったように眉尻を下げ、ツナは特大級の爆弾を放った。
「……オ、オレのせいなんだ……!!」
「ツナ、精神病院か脳外科医、どっちがいい?」
「野々原くん待って!オレの話を聞いて!」
一瞬で携帯を取り出した悠馬に、慌てた様子でツナが叫ぶ。
「いや、クラスメイトのためだよ。獄寺や山本が頭おかしくなったツナを見たらかわいそうだし」
「冷静な顔で電話番号探すのやめて!頭おかしいわけじゃないからオレ!」
「狂人はみんなそう言うんだよ」
「ほんとだってば!!」
どうしよう、これツナ抑え役に誰かいるな。
なるべく冷静に冷静にと自分に言い聞かせながら、携帯をむしり取ろうとするツナを無視して番号を打つ。
そのまま発信ボタンを押し、悠馬が耳元へ携帯を持っていこうとした、その瞬間――。
「ちゃお、野々原悠馬」
――なぜか、足元から声が聞こえた。