弱り目祟り目救いの手?
「……んっ!ん、ん!むーっ」
「もう少し色気のある声を出して下さい」
「なっ、なにしてるんすかマジでっ……!」
「キスですが?」
「平然と言うんじゃねえよ」
思わず殴りかけたが、振るった手はぱしっ、と軽く受け止められた。
「おやおやお口が悪いですねえ悠馬くん。それが先輩にきく口ですか?」
「っ、あんたみたいな頭おかしい奴、このくらいで……」
「お仕置きですねえ」
ほぼ反射で言い返したと同時――勢いよく胸元を突き飛ばされた。
「……んっ、は、ぁ……」
くちゅ、と濡れた音がすぐ側で聞こえる。
ふざけんな、と抗議にツンツン跳ねた頭部に手を伸ばせば、逆に強く腕を引かれて舌が深く差し込まれる。
ただでさえ重たい体が、深いキスによけい重く沈んだ気がした。
「……ふ、う……ん、ん、」
「はあ……やっと大人しくなりましたね」
離れた骸と悠馬の唇が、同じようにぬるりと光る。
「……な、にしてるんすかほん、とに……」
「普段と違うぐったり悠馬くんに、こうむらむらっと」
「しね、よ……」
うめくが体に力が入らない。さっきのキスも相まって完全に脱力しきってしまった気がする。
「……ねえ、悠馬くん」
「は、」
くい、と唇を指でぬぐわれた。
珍しく真剣な表情に、思わず息を呑む。
「……僕は、本気で君のことが――」
ドゴッ!
「忘れ物した」
はっと振り返る2人の先、ずかずかと歩み寄る雲雀の姿。
「……は、ひばり、先輩……」
「雲雀くん、君何しに帰ってきたんですか…」
タイミングとか空気とか……となにやらガックリうなだれ床へずるずると滑り込む骸の前、きょとんとした顔で雲雀が足を止める。
「何を落ち込んでいるの六道骸」
「落ち込みますよこのタイミングで来たら……」
「あ、そう」
「君もわりかしひどい人ですよね?!」
(た、すかった……のか?)
一方、ベッドの上でどくどく脈打つ胸元を押さえ、
呼吸を整える人間が1人。
『……僕は、本気で君のことが――』
知るかよ。
思わず頭を抱え、確実に熱の上がった体にため息をつき悠馬はぎゅっと目を閉じた。