Roommate! | ナノ
そして、状況は何も掴めないまま

「ん、ん、んーっ……!」
「ふ、は……」

 何だこれ何だこれ何だこれ。
 なんで、なんで俺が雲雀先輩と。
 骸なら、非常に不快だがまだなんとなくわかる。
 だが、なんでこの先輩と――。

「……ふ、ん、んー……っ……」
「煩いな……」

 一瞬離れた唇が、すぐに口を塞ぐ。

「……大人しくしてなよ」
「――っ?!」

 悠馬は信じられない思いで目を見開いたが、
 次の瞬間、唇を割り込んだ舌に意識を全部持っていかれた。

「……ん、う」
 ぬる、とした感触に思わず目をぎゅっと閉じる。
 必死で逃れようと動くのに、頭の上で括られた手首と雲雀の体が全てを阻む。
 ぴちゃり、と濡れた音が耳元で聞こえた途端、頬に血が上るのを感じた――何だよ、これ。

 本当に本当に本当に、なんなんだ。
 酔ってるとはいえやりすぎだろう、だって、こんな、こんなキス――。

「……ん、は、」
「……悠馬……」

 くしゃり、髪を掴まれる感触がした。
 うっすら開けた瞼の先に、蕩けたような濡れた瞳。
 やめてほしい、こんなくらくらするキスの合間に、そんな低い声で名を呼ぶのは。

「……ん、」
「……ふ、可愛い……」

 一瞬、鼻先で呟かれた言葉に背筋がゾクリとした。
 なんで、なんでだ。かわいいなんてそんな言葉、言われても何も嬉しく無いはずなのに。

「……悠馬……」
「っ、あ、!」

 耳元で名前を囁かれると同時、シャツの下を冷たい手がまさぐった。

「なっ、にして……ッ」
「何って、触ってる」
「っ、さわって、るじゃな、ひっ、」
「今の、」

 脇腹をかすめた手のひらに、思わず声が出る。
 眼前で目を細めた雲雀は、ゆるりと口角を上げ、

 嬉しそうに、愉しそうに――笑った。


「……今の、すごくそそる」


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