どこまでもくっつき虫
「悠馬くぅーんっ!!」
ドアを開けたらバカの声がした。
ドガンッ!
「痛い!普通に痛い!なんで避けたんですか今!」
「うっとうしいふさがこっちに飛び込んでくるとわかったんで」
「それ答えになってませんよ!」
壁に突っ込み若干赤くなった鼻の頭をさらしながら、むぐう、と膨れるのは六道骸、悠馬のルームメイト。
何がどうしてこうなったやら、悠馬としてはハタ迷惑な限りである。
「会うたび会うたび、人に抱き付いてくるのやめてくれません?」
「人ではありませんよ!悠馬君限定ですから!」
「もうやだこの人……」
たまに学校で見かける際にはけっこう真面目(というより腹黒そう?)な顔をしていることが多いのに、寮だとどうしてこうもボケまくっているのか。わからない。悠馬には永遠の謎である。
「あー、シャワー浴びたい」
突撃アタックはかわしたにも関わらず、頭にぎゅうぎゅうと張り付いてくるバカを放置しため息をつく。相手の身長がムダに高いせいで、うまいこと引きはがせないのだ。
「シャワーですか?僕も浴びたいですね是非ともいっしょにぐほぉう」
「1回死んできてください。こう、安らかに穏やかに」
「本当にツンツンですよねぇ」
「それはあんたの頭だ」
全くめげる様子のない彼に、悠馬はもう一度ため息をついた。
「……と、ここでビッグニュースがあります!」
「えっなに?死ぬんですか?」
「えっ」
「えっ」
なぜか見つめ合うこと2、3秒。
「……悠馬くんって絶対Sですよね。それもかなりの強烈な」
「どうでもいいから早くビッグニュース言えよ」
「ほらこの通り!」
悠馬の飛び蹴りをギリで避け、骸は引きつった顔で両手を上げた。
「……で、実はですね、」
「ハイ」
「今晩、雲雀くんが帰らないそうです!」
「……は?」
「なんでも風紀の仕事が溜まっているそうで」
「……はあ」
「凪から草壁哲矢伝えに聞いたので間違いありません!」
「あ、そうですか……」
そんなことに凪ちゃん使うなよ、と思うがとりあえず相づちを打ちスルーする。
なんだかとても嫌な予感がするのだ。
「……と、いうわけで悠馬くん!」
ビシッ、と無駄に人差し指を立てる紫頭のパイナップル。
「……なんすか」
盛大に嫌そうな顔をする悠馬。
「今夜は僕とナイトフィーバぐぼぉっ?!」
「本当に死ねよ」
全力で床に沈めてやった。