Blood&Tears | ナノ
A lie & help
気分は最悪だった。
嗚咽が止まらない事にも、最高に気分が悪かった。


「きょうや」
ぽつり、呟いた言葉にまた込み上げる。
何が起きたかなんてわからなかった。あまりに突然すぎた。
いつものように応接室にやって来た瑠久に、学ランをひるがえした黒髪は真顔でトンファーを薙いだ。そう、突然。
殺気も何もないそれに、とっさに避けられず壁に叩きつけられた瑠久を、雲雀は無表情に床に引きずり倒し、そして。
「…どうして…」
カタカタと、全身が震える。
馬鹿馬鹿しいと唇を噛みしめ、両腕で強く自身の肩を抱き、瑠久はベッドの隅で縮こまった。
わからない。もうわからない。
手加減なく絞められた首は痛み、胸中は混乱に満ちていた。
わからない。どうして。
うずくまる。立てた膝に、顔をうずめる。

「……どうしたんです」

このタイミングで、来たのか。
強く、膝に顔を埋める。
「……また来たのかよ」
チャイム鳴らせって毎回言ってるだろ。
言いかけて、しかし声が震えそうになって、やめる。
「…ひどい格好ですよ。どうしたんです?」
何かあったのですか。
静かに近づく気配がする。
「…何もない」
いやだ。来るな。見るな。来ないで。
混乱する胸中は色々と叫ぶけれど、肝心の口が開かない。動かない。動けない。
胸が痛い。
「…雲雀恭弥と、何かあったんです?」
「…何もない」
いやだ。いやだ。その名前を呼ぶな、
脳裏に鮮明に浮かぶのは、何の感情も無い瞳。

「……強がりですね」

ふわり、優しいぬくもりがした。
首元をくすぐる髪の感触に、息が止まる。
「…何があったか知りませんが」
耳元で、そっとささやく骸。

「僕では代わりには、…なりませんか?」

そっと背中をなでる手のひらは、とても暖かく優しかった。
うずくまる瑠久を抱きしめた骸は、わずかに震える体を落ち着かせようと、静かに言う。
「しばらくこうしていてあげますから…泣き止んでください」
「…泣いて、ないし」
「強がりですね」
「…なんでそんなにやさしいの」
「クフフ、僕はいつでも優しいですよ」
顔を上げた瑠久と、骸の視線が絡み合う。
「ひどい顔だ」
「元からこんなんだし」
「…ちょっと元気になりました?」
「……余計なお世話」
瑠久の頬を落ちる涙を指で掬い、骸はそっと微笑みを浮かべる。

「……別に何もないけど、」
瑠久は目を閉じ、体を包む骸の体温に身を預けた。

「……しばらくこのままでいて」

小さく嗚咽する瑠久の頭を抱き寄せ、
はい、と小さく呟き骸は目を伏せた。



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