Blood&Tears | ナノ
Day for murder
「…なんで、きょ、」
黒い双眼がこちらを冷たく見下ろしている。
違う、冷たいんじゃない。
瑠久を見つめる目は、虚ろで何も無い。
「離せよ、どうしたんだよお前、」
必死に声を上げた途端、首にかけられる温度の低い手。
押し倒され乗り掛かられたこの体勢では、抵抗することもできない。否、したくない。
だって相手は恭弥だ、恋人だ、想い人だ。なんでいきなり突き飛ばされて床に押し倒されて、それで首に手を掛けられているんだ。訳がわからない。わかりたくない。
手は袖下のナイフに反射で伸びるけれど、愛用の武器を出すことは瑠久には出来なかった。
だって目の前にはいるのは紛れもなく恭弥で、自分が愛した黒髪で黒目の、色白で頭が丸くて凶暴な野良猫みたいでかわいくないけど惹かれてしまう、そして惹かれ続けた、あの雲雀恭弥だったから。
「恭弥、どうして」
ぐっ、と首にかかる両手に力が入る。
馬鹿だ、そう思いながらも、どうして、しか繰り返せなかった。
意味がわからない。意味がわからない。
ねえ、意味がわからないよ、恭弥。
一気に絞められる。背中がのけ反る。
息苦しさから逃れようと仰いだ視界は、いつもと変わらない応接室の天井を映す。
きょうや。
声が出せない。目の前が滲む。
耳鳴りがする。焦点が合わない。
夢中で掴んだ手首は、びくともしなかった。
喉が潰れる感覚。血液が逆流するような意識。
暗くなっていく世界で、最後に頬を涙が伝った。


恭弥。
何故、俺を殺すの。





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