Blood&Tears | ナノ
Confusion
「ねえ、瑠久。ここの企画案なんだけど」
「…ああ、何?」
引き寄せた書類から目を上げ、雲雀恭弥は眉をひそめた。
机の向こうから、書類に目を落とし動かない瑠久。
「…ここ間違ってる」
「…どこが?」
「ここだよ」
ぐい、と瑠久の手首を引く。
途端、わずかながらも瑠久の肩が跳ね上がった。
「ほら、ここ」
それには気付かなかったふりをして、雲雀はトントン、と引き寄せた瑠久の手首を使い、指で書類の一角を差す。
「…ああ、ほんとだ」
やっと気が付いた、という顔で瑠久が目を開き手を引き抜く。
さりげなく行われたようで明確な、その避けられたという意思に雲雀はさらに眉根を寄せる。

「…ねえ、どうしたの」

睨みあげれば、瑠久が一瞬びく、と揺れた。
「……何が」
「避けてるでしょ、僕の事」
数日前から、彼は全く応接室に来なくなった。
廊下で会っても目を合わせず、帰りを待つ姿も無い。
元々勝手に待っている瑠久と仕事を終えた雲雀が一緒に帰る、という体だったから、雲雀が何か言う事でもないのだけれど。
「なんなの?」
剣呑な目付きでぎろりと睨めば、瑠久の顔がぐしゃりと歪んだ。

え?

「…なんでも、ないんだ」
絞り出すように言った瑠久が、
ぱっと背をそむけ走り出す。
「待ちなよ!」
思わず声をあげた雲雀の前で、
無情にもばたん、とドアは閉まった。




「……どうして、って…」
閉まった応接室のドアに背中からもたれかかり、瑠久は両手に顔を伏せうめいた。
ずるずると、滑り落ちていく背中。

「……そんなの、俺が聞きたいよ…」

突然殺されかけてから、2日。
でも雲雀は、いつも通りで何も変わらなくて。

「…意味わかんねーよ」

ぼや、と滲み出した視界に、
我ながら女々しい事、と瑠久は目元をごしごしとぬぐった。




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