偽りのツバサ | ナノ
プロローグ(2)

「ん?」
 本の山に埋もれるようにして座り込んでいた少年は、ふと顔を見上げ首をかしげる。
「あれ、なんだろ」
 呟き、再度首をひねる彼の周りを、

 急に渦巻く白い光、そして紋様。
 
「……んー、まだ切れてない、よなー」
 少年は首のネックレスをちゃらりと鳴らして確認すると、読んでいた本を閉じ立ち上がった。
 途端、待っていたかのように強くなる光の輪。
 真っ白なそれが全身を包んでいくのを苦笑しながら見やり、少年は手早く荷物を拾い上げた。

「お呼ばれ、かな?」

 へえ、珍しい。
 あの侑子さんから、なんて。


 呟いた瑠依の言葉は誰にも届かず。
 彼はあっという間に異世界へ消えた。


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