次の世界へ
嵐と最後の抱擁を交わし(空汰に危うく殴られるところだった)、モコナの魔法陣に飛び込んだ瞬間――チリッと何かの気配を感じた。
(なんだ?)
阪神共和国で時折感じていた、「あの人」の雰囲気ではない。
様々な光と色が飛ぶように後ろへ過ぎ去っていく光景の中、瑠依は何とか首だけ回した。
「!お前……」
『主人』
え。思わず凝視する。
遠ざかる、その白い姿を。
『……これからの旅の、幸運を祈る』
「いや待てお前、今主人って――」
『死ぬな』
瞬きをする。
今や巧断の姿は光と色彩に埋もれて消え、ただ声だけが鼓膜に届いていた。
まるで、初めに会った夢の中のように。
『全てを終えても――生き抜け』
それが、瑠依の巧断が残した、最後の言葉だった。
***
――どんがっしゃん!!!
「いいった!ちょっ、黒、俺の背中踏んでる!」
「ああ?!うるっせぇぞガキ!」
「あ、ゴメン瑠依君、それオレだー」
光が消えたと思えば、突然空に放り出された。
痛い、と呻いて立ち上がった瑠依の前、広がったのは、
ドガッ!!
「お」
「あ」
「わ」
「ひゅう」
小狼がカッコよく飛び蹴りをかます、そんななかなかアグレッシブな光景だった。