戦闘、開始!
4人がほぼ同時に駆け込んだ阪神城の中、突如、わっと熱気と喚声があたりを包む。
「なんだこりゃ」
「人いっぱいだねぇー」
「イケメンは?あるいは美女は?!」
通常テンションの3人の前、
「この手紙を書いたのは誰ですか?!」
唯一状況を忘れていない小狼が、声を張り上げ手紙を掲げる。
途端、
「あたしよーぉ!」
可愛らしい、よく通る声が背後から届き――
「「「「「「「プリメーラちゃーーーーん!!!」」」」」」」
――ほぼ同時に、大絶叫が鳴り響いた。
「なんなんだあの女は」
「すっっっっごい美女はっけん!!やっばい俺握手しに、って痛ッ!」
「「プリメーラちゃんに気安く触るな!!」」
「「プリメーラちゃんはアイドルなんだ!歌って踊れて美脚だぞ!!」」
「「そのうえすごい巧断が憑いてるんだ!!」」
顔をしかめた黒鋼とは逆に、顔をぱあっと輝かせた瑠依が駆け出しかけ、男達の群れに殴られる。
いってー、と唇を突き出し殴られた箇所をこする、そんな彼の姿を横目に捉え、黒鋼は呆れ切ったため息をついた。
「モコナと正義君を降ろして下さい!」
「え?あれ『シャオラン』じゃないの?」
ぴく、と動くプリメーラの眉。
「小狼はおれです!!用があるならおれが聞きます、早く2人を降ろして下さい!」
「小狼、モコナのことも人として数えるんだねー」
「瑠依君、君はもうちょっとあらゆる出来事に真剣になった方がいいと思うよー」
叫ぶ小狼の背後、非常にどうでもいい会話を繰り広げる瑠依とファイ。
「ダメよ」
小狼の呼びかけをすっぱり切り捨てた少女は、身軽に屋根へと飛び降りた。
「返して欲しかったら、あたしと勝負しなさい!」
「「「「「プリメーラちゃーーーん!!」」」」「「かわいいーー!!」」
「そして美女ーー!!」
「何気にお前も混じってんじゃねぇ!」
手刀と同時にツッコミをかます黒鋼の前、小狼が焦った表情であたりを見回す。
「登れる所を見つけないと……!」
「あ、それならオレ上いけるかもー」
「え?何ファイって翼でも生えてんの?」
「そーいうワケじゃないけどー」
天使みたいにカッコいいからわりかしあっても驚かないけど、などと真面目な顔で言う瑠依をスルーし、ファイは意味ありげに微笑んでみせた。
「オレの巧断に手伝ってもらって」