阪神城へよーいどん
「柔白兎!正儀!」
最初に小狼が叫んだとき、てっきり聞き間違えだと思った。
「――!〜〜!這個!」
「……アレ?」
小狼が何やら必死で言っているのだが、あいにくひとつもわからない。
いや、正しく言うと何の単語を話しているのか、脳が認識できないというか。
「今◎△×鳥■◎何飛◆◎連××?」
「Удивленный!С чем это написано?」
「あー……あー、うん。なるほど」
隣からも全く理解不能な音声が聞こえ、瑠依はやっと状況を悟った。
「ハ」の形に口を開け、ぽかんとした表情の小狼を見れば、言語は通じずともその内心はよくわかる。
「「「「モコナ!!!」」」の、翻訳機能がなくなったせいだ!!」
小狼、ファイ、黒鋼が人差し指を立てる前で、
ポン、と瑠依は手を叩いた。
***
「阪神城是這裡!」
「あーうんゴメン、まだ俺わかんないや、小狼」
地図を片手に小狼が一生懸命何かを伝えてくれるのだが、やっぱり理解できない。
悲しすぎる。いかにモコナが偉大だったか、心の底からよくわかった。
今度からはあのフワフワもこもこキュートラビット(?)をもっと可愛がってやろう、と瑠依が心に決めたところで、階段を駆け上がりきった向こうに城の頭が見えてくる。
「モコナ!正義君!」
「あんな所にいるよー」
「楽しそうじゃねぇかよ、白いほうはよ」
「うわおたっかー。泣いちゃってる正義」
4人同時に思ったことを口にして、あ……と顔を見合わせた。
「通じてるな」
「うん、わかるね」
「ことばが通じなくても、皆の美形っぷりは俺の目に焼き付いてたけどね」
「「お前(瑠依くん)は少し黙って(ようかー)ろ」」
「ということはやっぱりモコナが……」
2人のツッコみの後、小狼が真剣な顔で口を開く。
「翻訳機の代わりをしてたってことだねぇ」
「すごいなぁモコナは。羽根といっしょにイケメンも見つけてくれたらもう言う事ナシぐえっ」
「本気でその口縫いつけっぞ!!」
黒鋼の怒号が合図だったかのように、4人はそろって阪神城へと駆け出した。