偽りのツバサ | ナノ
誘拐は突然に

 羽根探しを始めて、2日目。


「みんな、やっぱり巧断出して歩いてないみたいだねぇ」
「困ったなあ。俺は皆のビューティフル巧断の姿を見納めたいのに!」
「そうじゃねえだろうが」
「あいたっ!」

 これじゃ誰の巧断が強いのかわかんないね、と平然と歩みを進めるファイ、
 その横で頭を押さえる瑠依にジト目の黒鋼、
 最後に苦笑しながらきょろきょろ巧断を探す小狼。

「それにもしどの巧断が羽根を取り込んでるのかわかっても、そう簡単に渡してくれんのか」
「そこはほら、黒の魅惑でちょちょいのちょいっと」
「てめえのその馬鹿な発言は聞き飽きた」
「え?なになに、俺ともっと話がしたい?積極的だな黒は!」
「誰がだ!!」
「わっ?!」

 相変わらずの馬鹿げた茶番を、突如さえぎるは小狼の大声。

「えっ、何どしたの小狼ってうわあお!」
「小狼くーん!瑠依くーん!」

 突然壁からにょっきり現れた少年にあっけに取られていれば、パタパタと近づく足音と声。

「正義君!」
「アッ君の巧断ねコレ」
「珍しくびびってたじゃねえか、てめえ」
「そりゃあびびるよ、俺こんな可愛い子に壁の中からアプローチされるほど良いコトしたかなって」
「……。」
「あれ?!なんで黒、無言?!」
「げ、元気そうですね……」

 ここまで走ってきたのか、はぁはぁと肩で息をしながら正義が頬を引きつらせる。
 多分「お変わりないですね」と言いたかったんだろうな、と小狼とファイは同時に察した。

「……ええと、探しもの、あの後見つかりました?」
「いえまだ……」
「だったら今日も案内させてください!」

 暗い面持ちを見せる小狼に、力強く言う正義。

「いいんですか?」
「はい!今日日曜ですし、1日大丈夫です!」
「ねぇ正義、俺またおいしいお好み焼きの店連れてってほしいなあ」
「え、あ、もちろんです!」
「瑠依くん目的忘れないでねー」
 余計な口をはさんだ瑠依にきっちりファイがつっこんだ、

 その時。


「?!」「「「!」」」

 
 とっさに振り仰いだ瑠依達が、次の行動を取る暇もなく――。



 キイィィィィイイイイ!!
「わあっ?!」「きゃー」



 空気を裂く轟音とともに――突如、正義とモコナを謎の化け物がさらっていった。


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